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楽園まで0マイル 【白鳥沢】
予選敗退後の白鳥沢引き継ぎのあたり。
本誌で天童くんの言葉を見て以来書きたかった。

若利くん愛し愛され…?腐ではなく。

最後の章は蛇足かも。おいかわさんとの会話の自分的解釈。



++++++++++++++++++++



春の高校バレーの宮城県予選。

絶対王者と呼ばれ全国大会進出常連校だった白鳥沢は、激戦の末烏野高校に破れた。

どれだけ接戦であれ、結果が全て。
春高を最後の公式試合と定めていた三年生は、敗けた瞬間が引退の時だ。


試合の熱も醒めない中で
白鳥沢学園のバレーボール部が使う体育館に試合に出ていた選手と応援していた部員の全員が集まり、整列した。

引き継ぎがつつがなく終わると
律儀にも試合直後に鷲匠監督に言われた「あとで百本サーブ」をやろうと牛島はジャージを脱いだ。
天童もぶつくさ言いながら続く。

引き継ぎの時に残る下級生と引退する最上級生とで分かれていたため、自然、三年生が並ぶ形になった。

バレーボールを手に持つと、牛島は不意に
「そう言えば」
と思い出したように顔を上げた。
「さっき五色が号泣していたが、俺は何か気に障るような事を言っただろうか」
「って今更?!」
「いや、あれは感涙だと思うよ」
天童は牛島の左隣で突っ込み、右隣にいた大平は軽く苦笑しながらも冷静に疑問に応える。

瀬見は瀬見で牛島に対し、ワンテンポずれたにしろ他人の反応を気にして口にするようになったんだなあと謎の感動を覚えていた。
山形は牛島に直接「何故泣いている」と訊かれなくて良かったな、と五色に生暖かい視線を向けた。
リベロである山形は三年生のかたまりの隅っこにぽつんと立っている。
監督の目に止まったら「お前は百本レシーブだ」と言われそうだ。言われたらやらないでもないが。
ポジションがリベロである以上サーブを練習してもあまり意味がないのだし。

「それにしてももう引退か」
「年明けの本選まではいられると思ってたから早いよネ」
しみじみとした山形の呟きに天童が乗っかった。
それを耳にし、牛島は動きを止め、
「すまない」
と、謝った。
「えっ
いや、若利のせいじゃないから!」
「そーだヨー!
むしろ若利くんのお陰でずっと全国まで勝ち上がれてたんだし」
思いがけない謝罪に二人は慌てる。
実際、白鳥沢はこの三年間、牛島を軸としていて、だからこそ全国でも通用するチームになっていたのだ。

だが、牛島はきょとんとして、首を傾げる。

「俺がいなくてもお前達は強いだろうが?」

その言葉に山形は膝をつき、天童は頭を抱え、
瀬見はコイツ本気で言ってるんだもんなあ、と遠い目をし
大平は混沌とした皆の様子をにこにこと見守っている。

「そうだ天童」
ようやく復活した天童に、牛島は再び声をかける。
「今度はナニ?!」
身構える天童に、「大したことではないんだが」と前置きをして
「試合の後、『さらば俺の楽園』と言っていたな?」
と確認するように問い掛ける。

「聴こえてたの?
ハズカシー!」
天童はひゃあ、と頬に手を当てたが
「恥じることはないだろう」
牛島は、ゆっくりと言葉をつむぐ。


「俺も
今年のこのチームを『そう』だと感じていたようだと
気づかされたからな」


牛島は口数が多くはないがその一言一言が重い。
本心からだとわかるその言葉は、うっすらと笑みをはいた表情も相俟って、
結構な破壊力を持っていた。

床にうずくまった天童に、牛島は
「大丈夫か」
と声を掛ける。
「大丈夫くないヨ……」
返事があるなら大丈夫だろうと、壁に寄っ掛かっている人物に視線を向けた。
「瀬見」
「うん、しばらくほっといてくれ」
「……山形」
「俺、レシーブに回るから」
「ああ」
ふらふらとおぼつかない足取りでコートの反対側に回る山形を見送り、
大平の方を向くととてもいい笑顔を返されたので、多分問題はないのだろう。

だが。
「……あっちにも大丈夫じゃなさそうなのがいるなあ」
大平の視線の先には茫沱の涙を流している白布がいた。
引き継ぎの時はむしろ表情を無くしていたのだが、今の牛島の言葉は涙腺に直撃したようだ。
「牛島さん!
卒業まで引退しないで下さい!」
いい加減サーブに入るか、と構えようとした牛島の許へと飛んでいき、すがりつく。
「無茶を言うな。
早く始めないと終わらないぞ」
「終わらなくていいです!」
「いや終わらせなきゃ駄目デショ」
自分より取り乱している白布の姿に天童は冷静さを取り戻した。

その様子を、コーチは眺めていた。止めるでもなく。
「……百本サーブどころじゃないみたいですね」
心なしか眼鏡の奥の瞳は潤んでいる。
「あーゆーのは俺が席を外してる時にやれや」
呆れたような鷲匠監督の声にも、少し湿っているようだった。

それでも、引退後も、なんだかんだで後輩達の指導で顔を出すことになるのだが。
バレーボールは高校までと明言していた天童も含め。



形式上の高校最後の練習を終え、
牛島と天童は二人連れ立って寮の廊下を歩いていた。
若利くんに訊きたいことがあるんだけど、との天童の呼び掛けに牛島が応えた。
「若利くん、青城の及川に執着していたみたいだけど
いなくてもウチが楽園だって思ったの?」
「ああ。」
その問いに、牛島はあっさりと首肯する。寸分の迷いもなく。
「準決勝後、最終確認をしたが、
やはり及川は視ているものや目指すものが違っているようだったしな」
「あー……」
牛島の言葉に天童はなんとなく思い当たる節がある、との意味を込めた声をあげた。

牛島は正論しか口にしない。
その論理がどこから来ているのかわからない人間には暴論としか思えないだろう。
だがその言葉には根拠がある。
言葉が足りない事が多いため、真意に気づかないままの輩も少なくないが。

吐き出したかったのか、牛島は珍しく言葉を重ねた。

「全国で勝つために及川の力があればと思ったが
あの男はうちに、白鳥沢に勝つことを目標にしているようだった」
「ああ、まあ、無理もないけどネ」

及川は、及川のいたチームは、
中学、高校と、最後まで勝てなかったが故に、
白鳥沢を、牛島をゲームにおけるラスボスのように捉えているのだろう。

実際にはその先がある。
牛島も、白鳥沢も、何度も全国大会に進み
幾度となく敗北を喫してきた。

県内では最強と謳われていた白鳥沢も、全国では数ある強豪校の中の一つでしかない。
中学時代から県内だけではなく全国という広い視野でバレーボール界を視ていた牛島はそれが身に染みていた。
全国大会の会場で、肌で感じていたのだ。
更には高校に入り日本代表に選ばれ、世界すら意識している牛島にとっては
青葉城西は「弱い」チームに見える。
その中で、及川だけは「強い」と評価していたのだが。

けれど彼の視野は狭いまま。
白鳥沢という高い壁のその先に、もっとずっと高い壁があることを
知ってはいても本当の意味では理解出来ていなかっただろう。
それだけ及川にとって牛島の存在が大きかったのだとしても。
ライバルの存在は大事ではあるがチーム戦である以上個に意識しすぎては全体を、大局を見誤る。

及川は引退する瞬間までその事を理解していたのかどうか。

「うちに来るべきだったと、惜しいと思っていた。
だが準決勝後の会話で、あいつがそれをまるで望んでいないと知った。」

違う世界を視ている人間と、志を共にするのは最初から無理だったのだ。
及川も白鳥沢に来ていれば強豪校のセッターとして全国に名を轟かせ、
日本を、世界を意識できるようになっていたのかも知れない。
雑誌に一度載る程度の存在ではなく、もっと広く活躍出来ていたやも。

けれど高校の最後の年まで牛島を倒すという妄執に囚われているような及川に
今まで何度も打ち負かされてきた、いつかは倒したいと望む相手がいようとも強いチームに入り
上を目指す、という思考はないようだった。

強いチームの中で揉まれ上を目指すことより
居心地のいい仲間のいる場所を選んだ。

取るに足らないプライド。
それを重んじるのが及川にとっての選択ならば
牛島には彼にかける言葉は最早何もない。

「ならばもう、俺があの男に固執する理由はない。
決勝の前にそう思えて良かった」

それは見限ったとも取れる宣言であったが、
天童からすれば随分と気を長く、心を広く接していると思っていただけに、その言葉が聴けてむしろ安心した。

友人が、明らかに憎悪にも近いライバル心を剥き出しで接してくる相手に何度も諦めずコミュニケーションを取ろうとしている姿には密かに心を痛めていたので。
牛島の強固な精神はその程度ではびくともしないとしても。
余計なお世話だとわかっていたため今まで口を挟まずにいたが。

「賢二郎や英太じゃ物足りなかったって事じゃないんならよかったヨ」
「そう思ったことは一度もない。
だが、選手層は厚い方が良いだろう?」

牛島は白鳥沢を豊かな土壌だと信じているし痩せた土地では立派な実は実らないと今でも思っている。
しっかりとした設備とスケジュールで鍛練してきた白布や瀬見はかなりの実力がつき、
また、全国の舞台を何度も経験してきたことで精神的にも成長してきた。
及川に劣るとはけして思っていない。
単に能力の違いによる戦力と戦略の選択の幅があった方がいいと思ったまでだ。
コンクリート出身だと嘯いていた日向翔陽が所属する烏野は、
戦ってみて、全国レベルのチームと研鑽を積んできたのだろうことがわかった。
間近で様々な特色を持つチームと戦い、視てきたのだろうと。
練習は、データや知識よりも実践が勝る。
頭で考えるよりも身体に慣れさせた方がいざというときに動くことができる。
その眼で実際に視た方が。

影山が中学時代とは打って変わりスパイカーに合わせたセットアップをするようになった事からも
烏野という学校が彼らに合った土地だったろうことがわかる。
一時期は全国大会まで歩を進めることが出来た学校だ。
人が去り荒れていたその場所を、様々な人々が手助けして耕し、蒔かれた種を育んだのだと想像に難くない。

だが自分達が劣っていたとは今でも思わない。
油断していた訳でもない。
なりふり構わない相手に、あの試合において、一歩及ばなかった。
烏野は、強かったのだ。
けれど、だから。

「五色達もちゃんと強い。
敗けっぱなしではないだろう」

ふ、と笑う牛島の表情は柔らかく、
白鳥沢に愛着を持っていると言葉にせずとも伝わった。
別に疑っていた訳ではないが、鉄面皮とも言えるどっしりとしていて表情も声音もあまり変わらない牛島が
態度で示してくれたことが天童には嬉しく思えた。

「俺は高校でバレー辞めるし
引き継ぎ終わったけどちょくちょく顔出そうかなって思ってるけど
若利くんはもうずっと大学の方に行っちゃう?」
「いや……」
珍しく言いよどみ、牛島は
「俺もそうしよう。
煙たがれるまでな」
と応えた。

「煙たがれるとしたら俺だけだと思うヨー?」
「そんなことはないだろう」
「そんなことあるって」

ああだこうだと牛島と天童はこれから先の話をした。

そしてわかり合う。


楽園から離れ難いと思う気持ちは、二人とも同じらしい。と。
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