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one anther【新坂】
坂道くんが明早大に進学している類いの未来捏造。
推理小説好きな新開さんとアニメ好きな小野田くんの交流。

新開さんの誕生日をからめようかと思いましたがややこしくなりそうなのでやめておきました。

タイトルでわかる人にわかってもらいたい。

ゾンビアニメを泉田くんに薦める坂道くんの話も読んでみたいなあ。


++++++++++++++


その場所で二人が鉢合わせをしたのは
偶然ではなく必然だったのかも知れない。

梅雨入りしてからというものぐずついた天気が続き、
新開が所属している自転車競技部では室内練習が主になっていた。
多少の雨ならば外を走ることも出来なくはないが
視界が悪く、長く雨に当たると体調を崩す懸念もあったため
自主練習であってもほどほどにとの通達があった。

そんな中での休養日。
新開は、独り本屋に足を運んだ。

高校時代は寮に住み、大学に入ってからは独り暮らしを始めたため、
基本的に本は図書室や図書館で借りることが多かった。
だが新開が好んで読むのは推理小説であり、
学校付属の施設では一般的な小説よりは品揃えはあまり良くなかった。
さすがに人気作ぐらいは置いてはいたが、
マニアックなものは壊滅的だ。

ネットに情報が溢れる昨今、
下手に検索してネタバレされることを避けるため事前に情報を入手することはせず、
以前読んで面白いと思った作家の新作や
題名や装丁や粗筋、帯の推薦文などから好みに合いそうなものを厳選する。
ベストセラーになっているものを避けたのは、しばらく待てば借りれそうという打算もあった。

上質なミステリは犯人がわかっていても面白く読めたりはするのだが、
読み進めるうちに真相に気付き、
最後まで読み終えたらもう一度頭から読み直す、とした方がより深く楽しめる。
犯人だけ先にわかってしまってはその醍醐味が味わえないため、新開はネタバレを忌避していた。
新開が、というよりは世のミステリファンの総意であろうが。

保管場所の事を考えるなら電子書籍にした方がいいのかもな、けどやっぱ紙の本は魅力的だよな、
などと考えながら何冊か手に持って会計に向かおうとしたところ、
何気なく視線を向けた、併設してあるレンタルDVDの棚の間に、後輩の姿を見つけた。

小野田坂道。
新開より二学年下で、この春晴れて大学の、そして部活の後輩になった、
高校時代のライバル校のクライマーである。

二年前、新開にとって高校最後の大きな試合だったインターハイで総合優勝を勝ち取った小柄な青年とは
スプリンターの新開は接点があまりなかったが
互いに名前と顔を知っていたため大学で接点が出来てからは急激に親しくなった。

元来人付き合いが苦手な小野田は、知人のいない新しい環境に戸惑っていた。

自転車競技部での顔合わせの際の様子から福富と新開の事は覚えていたようだが
二人は長年王者として君臨してきた箱根学園の元主将とエーススプリンターであり
小野田は彼らをその王座から引きずり下ろした張本人だ。
試合のあと直接会話をしなかった事もあり、小野田は遺恨があるものと思い込んでいたようだったが
嘘を吐くことを不得手とする福富が素直に当時の事を称賛し
新開が頼もしい後輩が出来て嬉しいと口にすれば
照れて恐縮した後に花が綻ぶように笑い、
以降、垣根は取っ払われたようだ。

もっとも、最初に小野田が畏縮していたのは
福富が何を考えているのかわかりづらい鉄面皮でやたら重い声を響かせ話し掛けたからだろうとは
新開はうすうす気付いていた。

コミュニケーションがあまり得意ではない巻島にあっと言う間になついた前歴がある小野田が
確かな実力のある福富や新開に尊敬の念を抱いて態度が軟化するまでにはそう時間はかからなかった。

元元インターハイ優勝の実績があった小野田は入部当時からいい意味でも悪い意味でも注目されていたが
言葉足らずな福富の言いたいことを懸命に理解しようとする姿や
気さくな新開の態度に戸惑い照れながらも応じる様子に
福富とは別の意味で真っ直ぐすぎる性格だと
他の部員達はあっさりと色眼鏡を外した。

新開は、そんな小野田と大学内で一番話をしているのは自分だと自負していた。
そのため小野田がアニメオタクだと言うことはとっくに知っている。
新開の見立てでは小野田が一番生き生きするのは誰かを褒めるときとアニメの話をする時だ。

案の定小野田が立っているのはアニメーションDVDのレンタルコーナーで、
手には既に借りるつもりだろうディスクを持っていた。
その枚数を見て、新開は思わず近寄り
「そんなに借りるのかい?」
と、少し屈んで耳許で問い掛けた。

「っ?!」
「っと危ない。
悪い、坂道くん」
「新開さん?!
あ、ありがとうございます」
驚いた拍子にばらまきそうになったDVDを支えて貰い、
小野田は相手の姿を確認すると名前を呼んで礼を告げる。
「いやいや。驚かせたのはこっちだから。
ごめんな、坂道くん」
不意打ちだったとは言えそんなに派手にリアクションされるとはなあと不思議に思っている新開は
自分の声の持つ破壊力にはまるで気づいていない。

「い、いえ。
あ、これは、一気に最後まで観たいので、大人借りといいますか。
明日は何の予定もないので、その」
「へえ」
新開はしどろもどろであっても律儀に質問に答える小野田を微笑ましく見つめ、ふと、手元に視線を移した。
「……ええと、それは、これかな?」
持っているDVDの題名に首を傾げ、
棚から一巻のパッケージを見つけ、抜き出す。

「ホラー、だよね。
こういうのも観るんだ。
なんか可愛いアニメが好きだったように記憶してたけど」
「ハイ! アニメに関しては好き嫌いありませんので!
あっラブ☆ヒメは別格ですが!
夏なので、なんとなくホラーが観たくなりまして」
「まだ梅雨だけどね。
まあ蒸し暑いし向いてるかな。
そうか、これ、アニメになってたのか。
映画になったとは聞いたことあったけど」
パッケージを見たまま何かを呟く新開に、小野田は首を傾げる。
アニメはあまり観ないと言っていた新開が何に引っ掛かっているのかわからなかった。

「あの、新開さん?」
「坂道くんはこれ観たことあるの?」
「え? あ、いえ、放送当時一話を録画しそびれてしまいまして。
今まで観る機会を逃してたんですよね。
いつかちゃんと観ようとネタバレは見ないようにしてたんですけど」
「今から自分の家で観るんだよね?
オレも一緒に観ちゃ駄目かな?」
「へ? えっ?」
「オレ、この作者の推理小説が好きでね。
ホラージャンルとして発表された作品もミステリ要素があったりするから全部読んでるんだ。
この作品の原作も読んでる。
どんな風に映像になってるか興味あってさ」
「あっ、成程! そうなんですね!
大丈夫です! 一緒に観ましょう!
……あ、でも」
はっと何かに気付き、小野田は「スミマセンやっぱり」と断ろうとしたが、
「なんだったらウチでもいいけど?
プレイヤーもあるし。
確か坂道くんの家とそんなに離れてなったよね」
「え、は……それなら……新開さんのおうちなら。
けど、いいんですか?」
「いや。考えてみたらいきなりお家にお邪魔したいなんて不躾もいいとこだったよな」
「い、いえ。いつでも誰かをお招きできるようにしてたら断りませんでした!」
坂道の部屋は、どうせ誰も訪ねて来ないだろうと趣味全開にしていた。
掃除などはしているがさすがに少し片付けなくては気恥ずかしい。

「なら、機会があったら坂道くんの家にお邪魔させて貰っても良いのかな?」
「それはもう!」
「有り難う。
じゃ、このレンタル料金はオレが出すよ」
「それは駄目です!
もともとボクが借りるつもりのものなんですから!」
小野田が折れたくない部分は頑として折れないタイプの人間だと、長くない付き合いながら理解している新開は
「なら、観ながら食べたり飲んだりするものを途中で買っていこうか。
それを全部オレが持つって事で。
多分オレの方がたくさん食べるしね」
と妥協案を提案した。
「でもおうちにお邪魔する上にそれじゃ、」
「無理言ったのはオレだからそこは譲って欲しいかな。
先輩のメンツもあるしさ」
「……わかりました。
お言葉に甘えますね。」
不承不承頷いたかと思ったら、納得した小野田は、へにゃりと笑った。

「なんか、楽しいですねこういうの。
新開さんは先輩ですけど、友達のやり取りみたいです」
「そうだな」
予想外の変わり身に新開は内心驚きながらも
福富が教えてくれた、金城が小野田を意外性の男だと言っていた、との言葉を思い出す。

てっきりロードバイク初心者が故の発想の柔軟さの事かと思っていたが、
むしろ普段の行動の方についてだったのかと認識を変える。
けどそれは、不快に感じるものではなく、
むしろとても好感が持てる類いのそれだった。

自転車で来ていたのだという小野田に付いて駐輪所に行ってみると
そこには部活で使っているロードバイクではなく、年期が入った、世間一般でママチャリと呼ばれる形の自転車が停められていた。

子供の頃からずっと乗っていたのだというそれは
小野田を自転車競技者向きに育てた立役者なのだろう。
練習としてではなく、自分の力だけで行きたい場所に運んでくれる、夢のような道具。
小野田が千葉にある自宅と秋葉原の往復を自転車でしていたというエピソードは耳にしていたが
実際に実物を目にしてみるとそれが真実だったのだと思い知らされ圧倒される。
小野田が嘘を吐けるような人間ではないとわかってはいたが、
絵空事のような経歴に信憑性が感じられずにいたのは確かだ。

けれど、大事そうに愛車に触れる小野田の姿に、
新開は忘れかけていた何かを思い出せた気がした。

誰かと競う事も楽しい。
レースで勝てたら嬉しい。
けれどもっと根底に。
速いスピードで自転車を走らせることの歓びがあったはずだ。
そこに在るのに、ずっと自分の中にいたのに。
いつからか、気にしなくなっていた。

高校の後輩である真波も自転車に乗るのが楽しいと全身で表していたが
何故だか小野田の方がよりダイレクトに新開に衝撃を与えた。
ロードバイクではないから、だろうか。

新開は方は徒歩だったため小野田の自転車の前のかごにレンタルしたDVDと購入した書籍を入れ
新開の住むアパートに向かう。
途中コンビニエンスストアに寄り食料を買い込む事も忘れずに。





「随分可愛らしい絵だったけど、それがいい意味でギャップとして作用してた感じだな。
演出も面白かった。
ありがとう坂道くん。君がいなかったら観ようと思わなかっただろうから、お礼を言わせてくれ」

途中、休憩を挟みながらも1クール十二話を一気に観終えると、
新開は満足そうに息を吐き出し、笑顔を向けて感謝の言葉を小野田に伝えた。

二人が邂逅したのは夕方だったが、今はもう日付が変わっている。

「いえ! 楽しんでいただけたなら良かったです!
ボクも面白かったです。
途中で感じた違和感がああいう意味だったのは驚きでした!」
「うん。坂道くんがそういう視点で気づいたのも面白かったな。
しかしこれをアニメにするなんてね。
最近のアニメの事は詳しくなかったけど結構懐も奥も深いんだな」
「はい! ジャンルが多岐に渡っていて幅広いんですよ!」

今になってまでアニメ好きな友人がいなかった小野田は
誰かと一緒に作品を観賞する、などということはしたことがなく、
観ている間中、ずっとふわふわとした心地だった。
アニメーションではあるが結構なホラーで死亡シーンなどかなりエグかったりしたのだが。

隣で観ていた新開は原作を知ってる上でのリアクションで、それもなんだか不思議だった。
ネタバレしない程度に、さりげなく、視聴の邪魔にならないタイミングで原作との相違を教えてくれた心遣いも嬉しかった。

もう同じように一緒にアニメを観る機会がないであろうことを淋しく感じるぐらい、
誰かと、否、新開と一緒に観られたのを楽しく感じていた。

プレイヤーからディスクを取り出した新開は、ケースを持っている小野田に手渡す。
小野田は頷きながら受け取ると、返し忘れがないようにと揃えて確認し、まとめてレンタルバッグに詰め込んだ。

テレビの電源も落とし、次に新開が発した言葉は
「じゃあ、取り敢えず一旦寝ようか」
だった。
「はい! ……はい?」
小野田は、元気いっぱいに返事をした後で言葉の意味が理解できなかったとばかりに首を傾げる。
新開はふわ、と軽く欠伸をこぼすと、
「真夜中だし、それに寝ずに疲れた状態の坂道くんを今すぐ帰らせる訳にはいかないよ。
歩いてにしても自転車でにしても危ないからな。
仮眠でもいいから少し寝ていけよ。
オレも眠い」
そう言って小野田の二の腕を掴んだ。

「いえいえいえ!
今ならまだばっちり目が醒めてますし!
ここからそんなに遠くないですし、大丈夫かと!」
「こればっかりは駄目だよ。
過保護だと思われるかも知れないけど、坂道くんは、オレの大事な後輩だからね。
どうしてもっていうなら送っていってもいいけど、
今から大事な用事があるなら最初から断ってるだろうしね?
ベッドと、寝巻きになるもの貸すから。
あ、シャワーも浴びるかい?」
これは半強制的に寝かせつけられるパターンだ、と把握した小野田はせめてもの抵抗として
「べ、ベッドは新開さんが使ってください!」
と主張した。
「うーん。けど、誰かを泊まらせたことないから客用布団とかないんだよな。
坂道くんはお客さんなんだし、ちゃんと疲れを取らせたいし。
明後日……ああもう明日か、には普通に練習あるしな。
体調管理も大事だぜ?」
「それはそうですけど、じゃあ新開さんはどうするんですか?」
「その辺は適当にな。
それよりあんまり聞き分けが悪いようならこのままベッドに運んで坂道くんが眠るまで監視することにするけど?
……そうだな。それが手っ取り早いか」
「へ? あ、あのっ?!」
新開は立ち上がると小野田を横抱きに抱え、そのまま寝室へと運ぶ。
「坂道くん、いくらクライマーとは言え軽すぎないかい?」
「そそそそんなことはないかと!
新開さんが力持ちなんだと思います!
ですけど取り敢えずおろしていただけると!」
「下ろすよ。ベッドの上に。
ついでに上着とズボンも脱がしてあげようか?
そのままだとシワになっちゃうし」
「……自分で脱ぎます……」
小野田は観念して新開の言葉に大人しく従うことにした。

自転車がらみの会話が多かったため気づかなかったが、人当たりがいいようでいて意外と頑固なようだと、
今泉あたりが聴いたら「お前も相当だぞ」と言われそうな事を小野田は考えていた。

新開からパジャマのシャツだけを借り、
自分の体格よりも大分大きなサイズだと余った袖で理解した小野田は
「……着てるのがボクじゃなかったら萌えなのになあ」
と至極残念そうに呟いた。
「何か言ったかい?」
「いえ。
眼鏡、ベッドサイドに置かせて良いですか?」
「勿論」

小野田は枕に頭を置くと程無くしてすやすやと健やかな寝息をたてはじめた。
しょぼしょぼと疲れを滲ませていた瞳を視て予想していた通り、眠気は既に限界だったようた。
あのまま帰らせなくて良かったと胸を撫で下ろす。

あれだけ恐縮していたのに随分と肝が座っているものだと感心も覚えるが、
毎日のようにロードバイクに乗り健康的な生活を送っていたら
多少の徹夜程度であってもすぐに限界を迎えてたとしても無理はないだろう。

新開もそのあどけない寝顔を見つめているうちに睡魔に襲われてきたので、
着ていた服を脱ぎ捨て下着姿のまま小野田の隣に潜り込む。

新開はどうするのかという小野田の質問をスルーしたのは最初からそのつもりだったからだ。
成人男子としては小柄な小野田とならば一緒に寝ても狭く感じないサイズのベッドにしていて良かったとしみじみ思う。

これは、小野田が先に起きても勝手に帰ってしまわないようにするためだと
心の中で誰にともなく言い訳をして。

声を掛けたのも、家に誘ったのも、
親しくなるチャンスになりふりかまわず飛び付いたからだということは
小野田はこの先も気づくことはないかも知れない。

「これで少しでも意識してくれるようになったら御の字かな」

淡い想いが、可愛い後輩に向ける種類のものとは違うものだとは
ロードバイクが恋人だと言って憚らない新開であっても自覚してしまった。
淡い、けれど強い想い。

時として痛みを伴うそれは、けれど新開は嫌いではなかった。
年下の一挙手一投足に心揺り動かされる己の心の動きすら。

日常生活に支障をきたしはしないが、けれど。
片鱗だけでも溢れそうな好意を小野田に伝えたかった。
それが、利己的なものであると知りながら。


日が昇り、眼を醒ました小野田の狼狽の中に嫌悪がまるでないことを感じ取った新開は、
もしかしたら自重する必要はないのかも知れないと、ひっそりと自信をつけた。

後日。

「坂道くん、オレが好きな推理小説が他にもいくつかアニメになってるみたいなんだ。
良かったらまた一緒に観ないかい? 一度に全部じゃなくていいから。
……今度は、坂道くんの家に招いてくれるんだろう?」
「……っ!」

口説いているかのような台詞と甘い表情で誘われた小野田は
顔を真っ赤にして、
「……少し時間をください」
と応えるだけで精一杯だった。


想いを隠すことをやめた新開の猛攻に耐えられず懐柔されるまでには、
互いが思っていたよりも時間を必要としなかった。
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