感想&突発小話

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強制エンカウンター 【木兎×夜久】
木兎←夜久…の予定でした。結果安定の木兎→夜久だった。
いつかリベンジします。

そして暗躍する黒尾。


木兎さん誕生日おめでとうございました。(大遅刻)



+++++++++++++++++++




同じように都内の学校に通っているのだから
学校帰りに遭遇する、というのは、むしろ今までなかったのが不思議なくらいだ。
お互い部活動で日が暮れるまで練習しているためタイミングが合わないのも当たり前ではあるのだが。

夜久と海が木兎達と出会したのは、都内の大型スポーツショップだったので
偶然と言えば偶然、必然と言えば必然だっただろう。

先に気付いたのは木兎の方だった。

「あっ!
おーい! やっくん!」
「ばっ、木兎! 店の中で大声出すなよ!」
ぶんぶんと手を振りながら嬉しそうに大きな声で見つけた相手の名前を呼ぶ木兎を、一緒に来ていた小見がたしなめる。
「ただでさえ木兎は目立つからなあ。
いるだけでも妙に存在感あるし」
猿杙はのんびりとした口調でそう呟くと
木兎の声に驚いた様子でこちらを視ている夜久と、
にこにこと笑みをたたえている海に向かいぺこりと頭を下げた。
挨拶と、謝罪の意を込めて。

そんな小見と猿杙の気遣いもお構いなしに木兎は小走りで夜久の元へと向かう。
全力疾走でないだけましかと思ってしまった二人は大分木兎の突飛な行動に慣れすぎて
感覚が麻痺してきているのかも知れない。

「あれ? 二人だけ?
黒尾は一緒じゃないんだ」
首を傾げる木兎に
「黒尾は別の買い物あるんだそうだ」
海がおっとりと応えた。
夜久も、木兎と一緒の顔触れを見て不思議そうな表情になる。
「木兎も赤葦が一緒じゃないなんて珍しいな」
「いやいや。赤葦に木兎の面倒見させてるのは基本的にバレーの事だけだって」
「行動範囲違うしな。
赤葦だって同級生とつるんだ方気が楽だろうし」
ゆっくりとした足取りで合流した小見と猿杙に言われ、夜久は自分が抱いていた先入観に気付いた。

「そっか。
合宿とか試合の印象強くてつい。悪い」
謝られ、木兎は「いやいやいや」と顔の前で手を振った。
「やっくんは別に悪くないぞー?
あかーしも一緒の時だってあるしな!
今日だって一緒にどうだー? って誘ったのに
『馬に蹴られたくないので遠慮します』なんてわけわかんねーこと言われて断られたし」
「馬?
……その言い方って……
木兎、他に誰かに逢う予定あったのか?
彼女とか、好きな相手とか」
赤葦の言葉を反芻し、意味を探るように問い掛けた夜久に、木兎は
「彼女なんていませんよ?!」
と慌てたように高速で首を横に振って否定する。

「買い物だけの予定ですけど?
あ、でもここに来たのは黒尾に『お前への誕生日プレゼントそこに行けばあるから。誕生日当日の放課後限定だけどな』って言われたからなんだけど……
どうせそろそろサポーター買わないとなって思ってたから丁度良かったんだけどさ、
店員さんに訊いてもそんなん知らないって言われたんだよなー」
「へえ、お前今日が誕生日なのか。おめでとう」
「……っ!
あんがと、やっくん。
……えへへ〜」
夜久に笑顔で祝いの言葉を告げられはにかんだのちでれっと相好を崩した木兎に、
瞬時にその想いを読み取った小見と猿杙は「あー……」と唸り
「成程。赤葦が言っていたっていう『馬に蹴られる』っていうのはそういうことなんだな」
海も理解してうんうんと頷いた。
他の誰かに祝いの言葉を言われたところで、あのような反応はせずに快活に笑うぐらいで終わっただろう。

あれは、誰が見ても、典型的な「好意を寄せている相手に思いがけない言葉を貰えて歓びを隠しきれなかった図」だ。

「じゃあ俺も邪魔だったかな。
黒尾は特に何も言っていなかったけど」
海は、二人を残して先に帰ってしまおうか、とも思ったが、お膳立てをしたのが黒尾であるなら最初から夜久独りで来るように仕向けただろう。
海はネタバラしをされても騒ぎ立てるようなタイプではないと知っている筈だ。
二年以上一緒に部活に汗水たらしている仲なのだし。

「いやいやそれよりいつから?」
小見は、気づいてたか? と尋ねるように猿杙を見上げた。
「木兎が夜久を、の方?
黒尾がそれを、の方?」
「両方だろ」
「合宿では普通、だったよな?」
「ああ、そう言えば」

海は、二人の会話を聴いて思い当たる節がある、とばかりにぽんと手を叩き、思い出すように斜め上の空間を視た。
「一週間あった森然での合宿の時、木兎と黒尾と赤葦君の自主練に後から夜久と後輩達と合流したことがあったんだけど
確かにあの時妙に二人がくっついていた印象が」
夜久から木兎にひっつくなんとことはなさそうだ、と小見は
「木兎が夜久に、ってことか?」
確認する。
「そうなるかな。
夜久にまとわりつきたくなる気持ちもわからなくもないよ。
夜久、きれっきれのスパイクを綺麗に拾ってセッターの位置まで上げたから」
「あー。ブロックに止められなくて、よっしゃ決まる、って時にそれだったらわかんなくもないかな。
木兎、ああ見えて結構エースとしてのプライド高いし」
頷く小見に、猿杙は逆に首を捻る。
「けど木兎ってブロックに止められたらコンニャロって思うタイプだよね。
レシーブで拾われてもそれは同じなんじゃ」

「「「…………。」」」

「潜在的に気になってたのがそれをきっかけに花開いた、ってとこかな?
ちなみに翌日から参加しなくていい、むしろしないでくださいって黒尾に言われたよ。
夜久だけにお前は来なくていい、って言わなかったのは優しさなのかな」
「あーだから木兎自主練のあと消化不良みたいになってた日があったのか。
前日上機嫌だっただけに何があったのかと思った」
「赤葦も微妙な表情してたのはその時点で気づいてたからかー」
成程納得。と三人は


木兎は商品を物色するのも忘れ夜久との会話を続ける。
「ここ、音駒の御用達の店?
やっくんよくくるの?」
夜久も嫌な表情ひとつせずそれに付き合った。
自然な動作で、他の客の邪魔にならないように木兎を隅に避けさせて。
「たまに来るぐらいかな。
普段はもっと近い店で済ますけど、ここ種類豊富だから、見るだけでも楽しいからな」
「なるほどー」
「あ、でも今日は黒尾に割引クーポン貰ったから来たんだけどな。
今日限定のやつ」

ぴら、と見せたチケットサイズの紙切れは、明らかに手書きのものだった。
黒尾に似た黒猫のイラストと共に、「二割引」と書かれている。

んん? と顔を近付けてじっくりと眺めた木兎は、木兎ですら
「……それ、黒尾が書いたもんじゃないのか?」
そうと気付いた。
夜久は首肯し割引券を制服のポケットにしまった。
適当に、ではあるがなるべく折れたりしないようにそっと。

「だろうな。
どう見ても正規のモンじゃねーし。
でも店員さんに訊いてみたらちゃんと使えるみたいなんだよ。
アイツここの店員と仲良いみたいだから、頼んだのかもな。
俺がこれ使って買い物したら割り引きされた分後で黒尾が支払うからとかなんとかで話つけてる、とか。
もしかしたら今店ん中にいるかも」
「まっさか〜
……まさかだよね?」
「まー確かめたりはしないけど。
つかお前への誕生日プレゼントってなんなんだろうな?
俺への一ヶ月以上遅れのプレゼントはコレだそーだけど」
「へー。
まー黒尾が俺にくれたいものはなんとなくわか……
一ヶ月前に、誕生日?」
「おー。」
「い、いつ?」
「八月の八日。ちょっとの間お前よりおにーさんだったな。
黒尾はもうちょっと年下だな」
楽しそうに告げる夜久に、木兎はあわあわと両手をわたわたさせた挙げ句、やっと
「お、おめでとうございました?!」
と言えた。
「おーさんきゅー」
「あ! なんか、プレゼント! あげたいです!」
「あげるなら俺の方だろ。今日誕生日のやつから貰えないって」
言った後で、「そっか……」としょんぼりと肩を落とした木兎に、夜久は悪いこと言ったみたいだな、と苦笑した。

あげたい、と言ってくれたのだから、素直にありがたく受けとるべきか、と思い直す。

「じゃあ、俺が欲しいのお前が買って俺にくれ。
お前が欲しいもの俺が買うから。
それでいいか?」
「おー! 名案だな!」
「ついでに黒尾がくれた割引券使おう。
二個までオッケーらしいから。
……黒尾のお前へのプレゼントももしかしてこれなのか?」
「……そーかもな」
木兎は多分違うと思う。と思いながら、頷いた。

この時間がプレゼントなんだろうなとあたりはついたが、
それを夜久に言うにはまだ少し、度胸が足りなかった。


「猿も八月の上旬だったのにな」
「まあ同じ部活だからってみんなの誕生日把握してるとは思ってないしねー。
八月下旬の鷲尾もスルーされてたし気にしてないよ。
木兎だし」
高校生にもなって、という気持ちもあるためおめでとうの言葉一つで充分、とも思っている。
小見も、猿杙と同じ感じだ。
くれるものなら貰いはするが。
そのあたりは、さすが女子とでもいうか、マネージャー陣が誕生日だからとお菓子をくれたりするが。
「木兎は自分から祝ってアピールしてくるからなー
末っ子だし」
それでもやっぱりあげるのはお菓子や菓子パンぐらいだが。



海が店員に尋ねると、その店員があっさりとバックヤードを教えてくれた。
許可を得て覗いてみると、店内でのやりとりを全て聴いていたらしい黒尾は困ったように笑いながら手を挙げて海を迎えてくれる。

「ああ、本当にいた」
「……夜久は視野は広いし読みも鋭いのに大雑把なとこあるよな」
「今回はそれどころじゃないからだと思うけどね」
「楽しそうでなにより」
黒尾としては、木兎の淡い初恋とやらを応援してやらないこともない、
ぐらいのスタンスだった。
夜久にはそんな気がなさそうだったし。
けれど。
「……意外とお似合いなのかもな」
「二人がくっついたら黒尾がキューピッドだな」
「あ、そーゆーのはいいわ」
ひらひらと手を振り自分の功績を固辞する。
そうなると決まったわけでもないのだし。




悩んだ末二人が買ったのは色違いのスポーツタオルで、
黒尾は思わず「女子か!」と突っ込みながら姿を現してしまい夜久やら呆れたような眼で見られることとなった。
| 小話;その他 | 05:00 | comments(0) | - | pookmark |↑PAGE TOP
ミーティングをしてみましょう。 【選抜チーム】
作者選抜チームでチームとしてまとまるまでその4。
バレーボールは門外漢も甚だしいので間違ってる部分もあるかと…スミマセン…

多分最終目標は読者選抜チームとの試合。
Twitterチームは…勝った方とのエキシビションマッチとかですかね…(書くとは言っていない)
選抜チームじゃなくてドリームチームの方が一般的なんですかね?だが押し通す。


このシリーズは腐っていないつもりですが書いてる人間が腐っているので嗜好が透けて見えるかも知れません。
一応友情的な仲良しです。



++++++++++++++++++++



主に夜久が牛島のスパイクを完璧に拾おうと躍起になったことにより、
このチームで初めての練習だというのにやたらと白熱してしまった。

短時間でも消費した熱量が思いの外凄かったため
休憩がてらミーティングをしようかと七人で車座になって座った。

各各水分補給をしながら、練習中に思ったことを口にする。

セッターの及川はエースと呼ばれるウイングスパイカー二人にセットアップの確認をしていて、
夜久は天童に練習とは関係のない事を訊いていた。

青根は、頼まれていたこともあり、一緒にブロックに翔んだ百沢に何かアドバイスをしなくては、と普段あまり開かない口を動かした。

一番気になったのは、やはり。

「百沢。難しいかも知れないが天童さんの動きにつられないようにしろ」

天童が得意とするのはゲス・ブロックで、他のブロックとは連動せずに独自の動きをする。
天童の経験からくる先読み能力と勘があってこそのもので、初心者の百沢が一朝一夕で真似できるようなものではない。
だから、百沢は青根のブロックを参考にして合わせるように、と及川と夜久が口を揃えて言ったのだ。
牛島も隣で深く頷いていた。
それだけ、天童のブロックは特殊だった。

青根の指摘に百沢は神妙な表情で頷く。
「頭ではわかってはいるんですが。
視界に入るとつい一緒に行かないとと身体が付いていってしまって」
味方をも翻弄する動きをするならば敵には更に厄介に映るだろうが。
味方との連携のため、チームメイトの動きを視ることも間違いではない。
だがそのせいでつられてしまうなら。

「……コート向こうの相手を気にするように心掛けろ。
お前の身長なら少しぐらい遅れても問題ない。
まずはリード・ブロックがしっかりできるようになれ」
「わかりました。」

その様子を、青根の人見知りを心配してこっそりと見学に来ていた伊達工業高校の現主将二口が
「あの青根がほぼ初対面の後輩に指導してる……!
この調子で人見知りしなくなるのかなーそれはそれで淋しい気も……!
青根には変わらないでいて欲しいようなでも誤解されっぱなしもそれはそれで腹立つような!」
感激しているのかなんなのか複雑な心情を吐露していた。
黄金川にアドバイスもしたりしていたが、あれは同じ学校の後輩だからできるのだと思っていたので、驚きもひとしおだった。

なんとなく一緒に付いてきていた女川の
「顔とガタイと無口とロックオンで第一印象良くないけど青根はお前の十倍はイイヤツだもんな」
との言葉に
「青根は俺の百倍はイイヤツだぞ!」
と返したのは謙遜でも誇張でもなく本気でそう思っているようで、
女川は、うちの新キャプテンは思ってることを素直に口に出しすぎるんだな、と妙に感心した。

各自の確認を終えると、全員で対戦チームの情報を確認する事にした。
今回のこのチームが編成されたのは、
同じように各校から集められたもう一つのチームと戦う為なので
傾向と対策はある意味立てやすい。
同じ学校の線選手が二つのチームにバラけているため
ある程度お互い手の内を知っている。

烏野は選ばれた他校の選手とは試合での交流があるが
全国区ではない学校があるため東京勢は宮城の、宮城勢は東京の選手のことに疎かった。
そのため、手始めに選手についての情報交換を始める事にした。

全く情報のない黒尾も気にはなるが、
まず警戒するべきはスパイカーとして全国五本の指には入ると囁かれている木兎の方だろう。

「夜久ちゃん、梟谷の木兎ってどんなスパイカー?
雑誌ではちょいちょい取り上げられてるけど実際戦ってみた感触としてさ。
合宿とか、よく一緒にしてたんだよね?」
及川に尋ねられ、夜久は首を傾げた。
「合宿は今年は烏野……東峰も一緒だったぞ?
それに木兎は全国区の選手だし牛島だって知ってるんじゃないのか?」
名指しで訊かれたのが不思議だったようだ。
東峰は、「うーん」と唸りながらぽり、と頬を掻く。
「でも、夜久くんの方が付き合い長いだろうし俺はそれこそ雑誌読めばわかるような事しか言えなさそうだし、
俺も夜久くんの見解を聞きたいよ」
「ウシワカちゃんが知ってるような事は夜久ちゃんも知ってるだろうから一人に訊けば充分かなって」
東峰とは違いあからさまな言い訳に、夜久は
「目ぇ逸らすな及川。情報源は多い方がいいはずだろ」と突っ込む。
「東峰だって目の当たりにしたんだろ? 木兎のしょぼくれモード」
「う、うん。って、あれっていつもなのかな? あの時だけじゃなくて?」
「梟谷のやつら全然乱れなかっただろ?
頻繁ではないけどよくあるぞ。
なかなか直んねーみたいだし、即席チームならたち直させるのに手間取るかもだから
もしかしたら木兎を崩せば結構な穴になるかもな」
けど、俺以上に木兎を知ってる黒尾がいるから意外とすぐなんとなかるかも知れないけどな、と付け足す。

「メンタルに左右されやすいんだね。
岩ちゃん……と、ウシワカとは違ったタイプのエースなのか」
「技術はあるんだよ。
超インナーとか撃ってきやがるし」
練習試合で実際に視た東峰は「ああ」と思い出しながらうずうずと手を動かした。
スパイカーとして、あんなスパイクを撃ってみたい、と思わせたソレ。
「あれは凄かったなあ。
本人はまぐれって言ってたけど」
「地力がなきゃまぐれでも成功しないって」
「ああ。調子に乗った木兎は、相当手強い」
牛島も夜久に同意する。
「牛島さんがそういう程の選手なんですね」
「まがりなりにも全国区の強豪校のエースだからな。」
「別の意味で調子に乗ると逆に崩す隙になるんだけどな」
百沢の言葉に牛島は頷き夜久は苦笑した。

「あと、何度も練習試合してて気づいたのは、
木兎は結構リバウンド使ってくるってことかな」
「……リバウンド」
青根がその単語にぴくりと反応する。

リバウンドは乱れたトスでのスパイクを決めるのを避けるために、わざとブロックに当てて弾き返させ立て直す、という戦法だ。
ブロックをいいように利用されるプレイだけに気になったのだろう。

眉間に皺を寄せる青根に、夜久は「でも」とにやりと笑って見せる。

「そうとわかってれば対処のしようがあるだろ?
このチームのブロックの要はお前だ。
青根、叩き落としてやれ」
「……!」

夜久のその言い方と、表情を視て、あまり似ていない筈なのに青根の脳裏には同級生の顔が浮かんだ。
具体的には春の大会の予選の時に青葉城西高校と戦ったときの、モーションがバレバレなのにツーアタックをやりたがる黄金川に「ぶっ叩け」と助言した時の二口の顔が。

ので、思わず勢い良く、いつものコクリと頷くのではなくぶんっと頭を縦に振っていた。
心なしか、嬉しそうな表情で。



会話が聴こえていない分、二口にはそれが衝撃的な光景に映った。
「青根があんなに楽しそうに……!
嬉しいけど悔しい、なんだろうこの気持ち!」
「……二口お前、もういっそ青根の保護者として傍にいさせて貰えば?」
「保護者じゃねーよ茂庭さんじゃあるまいし!」
「今日お前なんかいつも以上に面倒臭い」



一方、もう一つのチームのミーティングでは黒尾が木兎に問い掛けていた。

「木兎、お前たまにリバウンドするよな。
まー梟谷はお前だけじゃなく木葉とかもやるけど」
「おー。
やっぱ万全なトスで気持ちいースパイク撃ちたいからな!」
「影山クンのトスなら問題なさそうだけどな。
まあイレギュラーは起きるもんだしやりたくなる場面もあるだろうけど、
あっちのチームと戦うときは、それ封印な」
「なんでっ?!」
「あっちにブロックの名手がいるならほぼほぼ叩き落とされるだろうからだよ。
自分でも言ってたろーがリバウンド狙っても落とされたりするって。
もしくはリバウンドにならずに向こうのチャンスボールに変えられるか。
夜久から情報行ってるだろうしな」
「巧く対処されるとは限んないじゃん!」
「巧く行かなくても絶対にしょぼくれモードにならないってんならやってもいーけどな」
「ぐぬぬ……!
つかしょぼくれモードってナニ! そんなのになった覚えありませんけど?!」
「まじか」

黒尾と木兎のそんなやりとりを聞いていた澤村は
「なってた自覚ないのか……」
それを受け入れてる梟谷は凄いな、とよくわからない尊敬の念が生まれた。



「俺が木兎のリバウンドの情報をこっちにリークするだろうって黒尾が読んで木兎に忠告するだろうからもしかしたら使ってこないかも知んないけど
木兎のことだからそういう状況になったら言われたこと忘れて使ってくると思うから
トスが合わなさそうだって思ったらリバウンド来るかもって心づもりだけしといてくれればいいから。
リバウンドだと軟打になるだろうし避けてくれたら俺が拾うし」
「夜久ちゃんと黒尾くんてなんなの?
二人で違う読み合いゲームでもしてんの?」
「黒尾のいるチームには敗けたくないだけだ」
「え、仲悪いの?!」
「別に悪くはないけど、本気の試合で敵味方に分かれるなんてシチュエーション滅多にないからな。
どうせなら黒尾に勝ちたい」
「……仲悪いの?」
夜久の好戦的な笑みに、及川はますます首を傾げる。

夜久が対抗意識を抱くとしたらリベロである烏野の西谷に対してだと思っていた。
普通は同じポジションや対峙するポジションの選手を倒したいと思うものではないのだろうか。
ましてや夜久と黒尾は普段はチームメイトなのだ。
少なくとも及川は普段トスを上げる相手である岩泉に対してやっつけてやるとは思わなかった。
けれど。
「……いや、それにしては楽しそうか。
なら、ちょっとは気持ちわかるかな」
仲が悪いのではなく、良いからこその闘争心なのだとすると理解できなくもないか、と思い直した。

牛島は夜久の燃えるような瞳に眼を奪われた。
さすがにお遊びとは思っていないが、
牛島は互いに即席チームなだけにどうしても公式戦と同じだけの緊迫感は持てずにいた。
けれど、夜久はかなり本気だった。
もしかしなくても、と牛島は口の中で呟き、
「……相手に絶対に敗けたくない、と思う気持ちは、このチームの中では夜久が一番なのかもな」
勿論俺も敗けるつもりは毛頭ないが、と付け加える。
天童はウンウン若利君も相当な負けず嫌いだよネーとにこにこと笑った。

けれどならば腑に落ちる事もある。

「だから衛輔君は最初から積極的にチームまとめようとしてたのかもネ」
勿論及川も影山に対し絶対敗けたくない気持ちはあるだろうし青根も日向を止めたいと闘志を燃やしているようだ。
だがそれは他校の選手相手で、少なくとも一度戦った事があるからこそ芽生えるものだとわかる。
黒尾と夜久は同じ学校のチームメイトだ。

「工も若利君と違うチームで戦うってなったらあのぐらい闘志燃やすかもネー。
衛輔君と違って工はやる気が空回りしそうだけど」
天童が楽しそうに話す仮定に牛島はふむ、と納得しかけ、首を傾げた。
「……もりすけくん?」
「あ、そこ引っ掛かるの?」


青根が真面目に百沢にブロックのことについて話しているとき
夜久と天童が話していたのはプレイとは全く関係のない話だった。

「白鳥沢って皆牛島のこと下の名前で呼んでるのか?」
「そうダヨー。
ナニ? 夜久クンも若利君のこと若利君て呼びたい?
呼んでも大丈夫だと思うヨー?」
「いや、そうじゃなくて、なんつーか、俺とにとって牛島って全国三本の指に入るエース、ウシワカって印象だし
本人もストイックっつーかバレー馬鹿って感じだしで
同級生でチームメイトでも名前で呼ばれるタイプだと思わなかったっていうか」
「意外だった?」
「いい意味でな。
牛島とお前しか人となり知らないけど、お前ら二人を見ただけでもいいチームなんだろうなってわかるよ」
「……衛輔君はあんまりチームメイトから名前で呼ばれてないのかな?」
「苗字の方が短いし呼び易いだろうし。
その呼び方は烏野のリベロはしてくれてるけど」
「俺ヒトのこと結構名前呼びするから衛輔君て呼んでもいい?
なんなら衛輔君も覚って呼んでくれて大丈夫ダヨー!」
「そうだな。手っ取り早く距離が縮まった感じになるからそうするか」
夜久は音駒の後輩を研磨やリエーフと名前で呼んだりもしているのでその事に対してハードルの高さは感じなかった。
「あ、でも他のヒトのことは別に苗字のままでも構わないよ? 及川とか!
若利君と俺の事だけでいいからねー」
「……覚、お前、及川嫌いなのか?」
「別に嫌いじゃないヨー?
及川が若利君のこと毛嫌いしてても若利君があんまり気にしてないみたいだから
俺が代わりに及川が若利君にしてるみたいな態度取ってるダケ」
「わかりやすいけどわかりにくいな」

そんな話をしたのだと天童は夜久を伴って牛島に報告した。
「そんなわけでこれから衛輔君も若利君のこと若利君て呼ぶけど別にいいよね?」
「ああ。断る理由はない」
「俺のいないとこで決定事項にするなよ……覚」
「ふむ。天童が名前で呼ばれているのを聴くのは新鮮だな」
「若利君、俺の名前知らなかったとか言わないよね?」
「大丈夫だ。一瞬誰の事かわからなかったがすぐに理解できた」
「うん、若利君にしては上出来かな」
「お前らの関係面白いな」
生真面目な牛島と軽妙な天童の会話に、夜久は思わず吹き出してしまった。
誰が選んだのか知らされていないが
チームを編成した人物が人間関係をも考えての事だとしたら
その中に混ぜてもらえたことを感謝したいと思えるぐらいには
夜久は微妙に絶妙なバランスのこのメンバーのことを気に入っていた。

「そう言えば天童は監督のことも名前に君づけだったな」
「それを赦す監督もすげーな!」
「……鷲匠監督は、いい監督だ」
牛島がしみじみと口にした言葉は、ずっしりと重く響いた。
「鍛治くんが聴いたら泣いて歓びそうなコメントだね!」

| 小話;その他 | 02:37 | comments(0) | - | pookmark |↑PAGE TOP
協力体制フォトグラファー 【赤夜久】
両片想いな赤夜久。
と協力的な梟谷とギブアンドテイクな研磨と自分から巻き込まれにいくスタイルの黒尾。
赤葦くんが暴走気味。


+++++++++++++++++++



「なーなー黒尾ー」
合宿中自主練習を一緒にしている他校の主将兼エースに声を掛けられ、かいた汗の分を取り戻そうと水分補給していた黒尾はボトルから口を離した。

「なんだよ木兎」
突飛なことを言い出す男だと嫌と言うほど知っているため、面倒臭そうに、けれどきちんと相手をしてやる。
適当に相手をして良いときもあるが、余計煩くなることがある。
黒尾はそのへんの見極めが巧かった。
梟谷の中では赤葦があしらい上手だ。余計煩くなってもスルーする能力に長けているという意味でだが。

「お前んとこの夜久んさー、最近ちょいちょいうちのマネージャーとコソコソなんか話してるんだよねー。
なんなの? 付き合ってんの?
黒尾、なんか知らない?」
今回は案の定、適当に相手をしていたら後に引き摺りそうな内容だった。
黒尾は、夜久と梟谷のマネージャーねぇ、とちらりと視線を向ける。

確かに今現在も三人で仲睦まじそうに話しているが。
なんだろう、周囲に花が舞っていそうな、女子トークか、という空気だ。身長的にも馴染んでいるし。
と、黒尾は夜久に聴かれたら蹴られそうな感想を抱く。
性格的には女子とは程遠い、音駒でもズバ抜けた男前だとちゃんと知っているのだが。

「付き合ってるって、二人ともとか?
どっちかとにしちゃどっちとも満遍なく話してるダロ」
「あーそーかも」

だが、確かに黒尾も気になっていた。
音駒にはマネージャーがいない。
そのため雑用などは一年生やレギュラー以外が率先してこなしているが
もたついていたりなんだりで手際が悪いと見ると
夜久がそれに参加、どころか、いつの間にか中心になってやっている事がある。
だから最初はマネージャー業のノウハウでも聴いているのかと思ったが、それにしては時折浮かべる蕩けるような表情が気になる。

気になると言えば、初めて夜久と梟谷のマネージャー二人が会話をしてるのを見掛けた日あたりから、
二人のマネージャーがデジタルカメラやスマートフォンで写真をパシャパシャ撮るようになった、気がする。
練習風景やなんかを記録してますよ風にカモフラージュしているが
よくよく観察していると主にレンズが狙っている被写体は特定の人物だ。

「……まさか、な」

思い当たる節がないではないが、そう思っていた。

何回目かの合同合宿の夜。
音駒での合宿で、勝手知ったる校舎だとばかりに夜久が独りで人気のない場所に移動し、
薄暗い場所でこっそりスマートフォンを眺めながら
「やっぱあかあし可愛いな……」
と倖せそうに呟いている現場に遭遇するまでは。

そろそろ就寝時間だと言うのにどこに行くんだ? と気になって後ろをついてきた事を黒尾は軽く後悔した。
聞き捨ててしまえ、と本能は訴えてきたが、好奇心を抑えることが出来ずに思わずそっと背後に忍び寄り、
夜久の制止の声を無視してそのスマートフォンを取り上げ、画面を見、
ついでに指を滑らせ他の頁をめくってしまった。

するすると変わる画面の全てにアングルやシチュエーションは違うものの同じ人物が写っていて、
黒尾は無言で画面を閉じて持ち主に端末を返した。
夜久も、勝手に中身を視たことに対する文句も言わずに受け取る。

気まずい沈黙と空気の中で、黒尾は、どこか申し訳ない気持ちで「あー……」と呻きながら首筋を撫でる。
多分、夜久は知られたくなかっただろう。
それを暴いたのは自分だ。
なら、なんとかするべきは己だ。と重い口を開く。

ああして写真を眺めてあんな事をのたまっていたが、
夜久が赤葦と話をしている姿などほぼほぼ見ていない。
会話などなくても人となりを知ることは出来るだろうが、きっかけはないこともないのだ。
人見知りするタイプでもなし、視ているだけで満足する性格でもないはず、だと黒尾は夜久を分析している。
ということは。

「……あの、サ」
「……ナニ」
「えーと……夜久サンは、赤葦クンの見た目が好きなの?」
「大好きだけど?」
即答され、うっわ開き直った、と呆れた表情の黒尾とは真逆に、夜久は、頬をうっすら朱く染め、嬉しそうに微笑んでいる。

高校に入ってからの付き合いではあるが、同じクラスで同じ部活の夜久の
こんな表情を視るのは初めてだった。
一年生の時の、好みの話をしたときよりもずっと、愛しげな表情。
思わず、コイツこんな可愛い表情出来たのか、とまじまじと見つめてしまうほどに。

夜久はスマートフォンをスリープモードにすると、宝物のように、大事そうに両手でそっと包んだ。

「っても好きなのは見た目だけじゃないけどな。
だからってどうなれもしないから、せめて写真だけでも欲しいって梟谷のマネージャーに協力して貰ってた」
「その数えきれない写真の数数はやっぱそーゆーコトなのね」
「そーゆーことだよ。
白福と雀田には、ちゃんと赤葦に許可取っての上で、って頼んだから
隠し撮りっぽくても赤葦も撮られてんの知ってる筈」
俺に横流されてるとは思ってないだろうけど。
少し切なそうに笑う夜久に、あ、こりゃほだされるわ、協力したくなる。と黒尾の心も揺れた。

「けど、可愛い、なのか? カッコいいじゃなくて?」
黒尾の問いに、夜久はきょとんと大きな瞳を丸くさせる。
「赤葦は可愛いだろ?
あ、試合中はかっこいいけど」
「普段は可愛いって?
無愛想だし特に木兎相手になんて結構辛辣だぞ。」
「そこが可愛いんだよ。
先輩に翻弄されて、あしらいながらも完全には無視しきれなくて、でも不機嫌だってのとかこの人面倒だなってのが顔にめっちゃ出てて。
木兎さまさまだな!」
「木兎もそんな理由で夜久に感謝されてるとは思いもよってないだろうよ……」
と言うか知ったら嘆いて夜久にどういうことですか! とすがりそうな。

それにしても。
と、いつもは前向きな夜久が消極的な態度な事に、黒尾は戸惑う。
確かに、どうにもならないことかも知れないけれど、
他校なんだし当たって砕けても問題ないだろうに。
それとも恋愛とは別の、芸能人のファンみたいな感じの好き、なのだろうか。

同級生でチームメイトで友人の、もしも、おそらく初めての恋であるなら、誰が相手であれ、
力になれるならそれが微力にしかならなくてもなりたいと黒尾は思う。
わざわざ口には出すことはしないが。
夜久の事なら、自力でなんとか出来そうではあるし。

黒尾はそんなふうに考えてしまった自分が照れ臭くなりがりがりと頭を掻いた。

そんな黒尾を横目に
「そろそろ寝る時間だし部屋に戻るか」
「……そうだな」
さっさと歩き出した夜久に促され、頷いてその後に続く。

ぺたぺたと、静かな廊下にスリッパの足音が二つ、響き渡る。

黒尾は、未だに嬉しそうに顔を綻ばせ頬を上気させたままの夜久を見下ろし、
もう一つ、気になっていた事があったと思い出した。

「そう言えばさ」
「ん?」
「研磨も最近よくスマホで写真撮るようになったよな。
主にお前のコト」
「ああ、そーいやなんか協力して欲しいって言われたな。
夜久くんのこと好きに撮って良い? って。
断る理由もないしいいぞって答えたけど」
「……協力、ねぇ」

なんのなんだか、と黒尾は夜久の安請け合いっぷりに軽く不安を覚えた。
もっと用途とか、そういうのを確認した上で許可した方がいーんじゃないのか、と。
そう忠告したところで
「研磨が俺にメーワクかかるようなことするわけないだろ」
と応えるだろうと思いながら試しに口にしてみたら、実際そう言われた。

なんなんだその研磨に対する全幅の信頼感。
自分が同じことを頼んだら根掘り葉掘り理由を訊いてくるだろうと予想がついてしまう分、少し不機嫌になるが、
自分がそんな事を言い出したら理由はロクでもないことだろうとの自覚もある。

ともあれ、詳しく話をきいてみたところ、そう訊かれた時期は今年最初の合同合宿の日らしい。
黒尾は、出不精な筈の幼馴染みがどこぞの有名店のアップルパイを旨そうに食べている姿を度度目撃し始めたのがその後からだと思い出す。
いくら孤爪でも家での貰い物だとしたらいくら好物であったとしても家族で分ける筈だ。
なのに独り占めしていた。と言うことは。

そして困った事に、黒尾は、合宿中に行われている主将会議の時に
主に木兎のせいで苛立った赤葦がスマートフォンを取り出し何かを視ては気を落ち着かせている様子を何度か目撃していた。

その二つを結びつけるには多少情報が足りないが、カマをかけてみる価値はありそうだった。

それに、裏付けならばすぐにでも取れる。
簡単に口を割るとは思えないが。

そうとなれば善……かどうかはさておきとりあえず急いでおけと
翌朝、黒尾は赤葦が独りでいるところを捕獲し、物陰に連れ込んだ。

合宿も終わりに近づいている。
その前に疑問を解消してしまいたい。

「赤葦さぁ」
「なんですか。
黒尾さんに壁ドンされても全く嬉しくないんですが。
というか不愉快です。すぐにでも離れて欲しいんですが」
「おーおー手厳しいことで。
なに? されるなら夜久んのがいいって?
それともしたい方かな?」
煽るような黒尾の言い方に顔をしかめたが、
「……そうですね、黒尾さんよりは百億倍マシですね」
赤葦は少し間をおいた後、肯定した。
「言うねぇ」
俺だって男を壁に押し付ける趣味はねぇよ、と、黒尾はあっさりと身を引く。

そして、
「研磨からだと部活前後のヤツしか貰えなくねぇ?」
と、脈絡のない話を切り出す。
「……なんの話ですか」
「俺、同じクラスなんだよね。
授業も一緒だしあらゆる学校行事も大体一緒。
特別授業も一緒で、ああ勿論体育も一緒なんだよなー。夏だとプール授業もあるわけで」
黒尾の言葉に、赤葦は明らかに不機嫌になり眉間に皺を寄せた。
成程研磨と同じで機嫌が悪いのはわかりやすいな、そんでこれが夜久には可愛く見えるわけか、
と、黒尾は心の中でふむふむと理解した。共感は出来ないが。

「それが、どうしたんですか」
「別に?
あー。そーいや一年の時の写真も多くはないけど撮って残ってたよーな。
要る?」
ぴくり、と反応した赤葦は、ふう、とわざとらしく大きく息を吐いた。

「……誰の事を言っているのかわかりませんが。
そうですね。欲しくはあります。」
しらばっくれようとした割りに意外と素直だな、と思うより先に。
「黒尾さんのポジションが」
「は?」
問い掛けたものとは微妙に違う応えが返ってきた。

「俺も夜久さんと同じ学年で同じ学校なら、普段のカッコいい夜久さんを堪能できていたかと思うと羨ましいことこの上ないです」
「普段の夜久が、カッコいい?」
「あ、試合中は可愛いです。
(仔)猫がボール遊びしてるみたいで、愉しそうで」
「今、小声で『仔』って付けたよな?」
「……言ってません」
ぷい、と視線を逸らすが、否定の言葉は弱い。
「しらを切るならもっと本気で誤魔化せよ。まー確かに夜っ久んでかくはないけどな」
「心が小さいよりマシです。夜久さんは大きな人です」
「その意見には大いに同意するけど……待てよ」
「何をですか」
黒尾は額に右手を当て、左手の掌を赤葦に向け、考える。

夜久は、普段の赤葦を可愛いと言っていた。試合中はカッコいいとも言っていたが。
赤葦はその逆で、ええとつまり?

「……赤葦クンは夜久サンに押し倒されたいの?」

「ああ、それも悪くないですね」
「悪くないんだ?!」
「まあ、どっちにしろ無理でしょうけど」

寂寥を滲ませた表情とその言葉に、黒尾は、
ああ、赤葦は夜久よりわかりやすく恋慕なんだな、とすとんと納得した。

「先に進みたいとは思わないのか?
告白、とはいかないまでも、もっと仲良くなろうとか」
「俺みたいな下心満載の人間が近づいて汚していい人じゃないです」
「随分夜久のこと高く評価してるけどアイツだって人の子でお前みたいな下心全くない訳じゃないからな?
それに、お前が近づかなくてももっとヒドい輩が夜久に近づかないとも限らないだろ」
「……近くにいられたらそういう魔の手から夜久さんを護れるんでしょうが」
「黙って護られる程夜久もヤワじゃないけどな」
「そうですね」

黒尾は、赤葦がもっとがっついてるようなら牽制するつもりだった。
だが実際は真逆で、むしろ背中を押してやりたくなってしまった。

「あー……赤葦。今度メアド教えろ。」
「そういえば交換してませんでしたっけ」
「必要ないと思ってたからな」
「……なら、これから必要になると思ったんですか?」
「話、聴かせて貰った礼をしときたいしな。
最初に話したブツ。
要らないかも知れないけ「要ります」……りょーかい」
喰い気味な返事に黒尾はむしろ赤葦に対する好感度が上がった。
バレーボール以外でも熱くなれるものがあるのが、少し羨ましくもあったが。

例え夜久の赤葦に対する想いが赤葦の夜久に対する感情と同じだとしても
二人がくっつくのは夜久の引退後、もしくは卒業後だとたかをくくっていたから広い心でいられたのだと思う。


だが、最後の合宿から一ヶ月と少し後の十一月中旬に行われた、春の高校バレー東京都予選の代表決定戦において。

決勝戦が終わり、梟谷は準優勝で、音駒は三位で全国大会進出を決めた。

試合中は試合に集中していた。
だが、隣のコートの試合の様子は嫌でも耳に入ってきていた。
アクシデントがあったなら、尚更。

空気を読まない赤葦の駄目出し崩れ落ちたに木兎の
「タイミングだいじ」
の言葉を背中で聴いて、
赤葦は
「タイミングは、確かに大事、だよな」
と、独りごつ。

赤葦は監督に
「すみません少し時間をください」
と断りチームから離れた。
観客の中から黒尾を見つけ出すと、
「夜久さんは」
と、短く、だが意図がわかる問いを投げる。
黒尾は何かを察し、親指で夜久がいる場所を指し示した。
赤葦はぺこりと頭を下げると足早にそちらに向かう。

「……やっと動く気になったんだ。
もうアップルパイ買って貰えなくなるのは残念だけど夜久くんが倖せになるならまあいいか……」
「研磨、お前赤葦にどんだけアップルパイ貢がせたの」
「クロみたいに無償であげるほど俺にとって夜久くんは安くないからね」
「俺だってそうだよ」

「あの二人なんの話してるんすか?」
山本はこっそりと海にそう尋ねた。
夜久に逢いに行ったらしき赤葦の行動も気にはなるが、幼馴染み二人の会話が微妙に不穏だった。
海はおっとりと、だがどっしりとした態度でいつものようにアルカイックスマイルを浮かべたまま
「さあ。
でも多分、もしかしたらだけど、夜久の倖せについて、かな?」
と曖昧に応えた。

赤葦は廊下のベンチに座っている夜久を見つけると、ひょいと抱き上げた。
「お、おい? あかあし?!」
「すみません少し話良いですかあと出来れば二人きりになれる場所でがいいのでこのまま移動していいですか」
「……コーチがさっきの場所に直ぐ戻ってくるだろうから、手短にな」
所謂お姫様抱っこの状態のため、夜久は不安定な体勢になって落ちてしまわないようにと赤葦の首筋に腕を回した。
「……ありがとうございます」
そのため密着することになり、赤葦は試合でかいたのとはまた別の汗を額に滲ませた。

会場となったコートから少し離れることで意外とすぐに他に人がいない場所に辿り着くことができたが
捻った足首の事を慮り、赤葦は夜久を抱き抱えたまま、その耳許で囁いた。

「夜久さん、弱っているところにつけ込んですみませんが」
「っ!
別に俺は弱ってなんて」
「ないかも知れませんが、でも確実にいつもの夜久さんではないでしょう?」
「……っ」
ぎゅうと手に力をこめると、夜久の身体の温もりと震えとが、ダイレクトに伝わってくる。
無理もない。
あんな場面で負傷退場など、責任感の塊のような人が冷静でいられるわけはないし
結果はどうあれ自分を責めずにはいられないだろう。
まだ、時間もあまり経っていない。
だから赤葦はこのタイミングを選んだ。
卑怯だと謗られようと。

「それでも涙を溢さない、溢せない、気丈な貴方が好きです、夜久さん。
出来れば、俺のことを好きになってください」

労るような甘い声に、夜久は少し悔しくなる。
想いをぶつけるなら、自分からにしたいと思っていたから。
「……言われなくても、前から好きだったよ」

だから、意趣返しのように、最初のくちづけは夜久の方からしてやった。




「……夜久さんや」
「んー?」
「お前、赤葦と晴れてコイビトになったんだよな?」
「よせやい恥ずかしい」
「恥ずかしいのはこっちた。
なのになんで未だに毎日毎日お前のとこに赤葦の写真が送られてきてんの?」
「あかあし、まだ俺の前じゃ見せない表情あるからなー。
じかに逢ってるときは写真とか撮れないし。脳内フォルダには保存するけど」
「のーないふぉるだ……」
「木兎が撮った写真とか不機嫌丸出しでめっちゃ可愛い」
「木兎も参戦してんのかよ?!」
「梟谷のスタメンは全員送ってくれてるぞ。
多分半分以上面白がってだろうけど。
赤葦の同級生の子にも協力してもらってるから同い年に見せる。
お陰でメモリーがぱんぱんだ」
「ソレ、いつまで続けんの?」
「……そーだな」
夜久は少しだけ考える素振りを見せたが、答は最初から決めてあったようだった。

「赤葦が俺の前では見せない表情がなくなるまで、かな」

「……さいですか」

「その前に本人が止めろっていうなら止めるしかないけど
研磨とかお前とかだって俺の写真赤葦に送ってるんだからお相子だろ?」
「気付いてたんですか」
「逆に気づかないと思ってたんですか」
「じゃあソレも赤葦に気づかれてるかもってのの上でか?」
「気づいてなかったらなかったで可愛いけどな!」


やはり夜久にとって赤葦は「可愛い」ものであるらしい。
どうやら夜の営みは体格差通りの予定であるようだが。
| 小話;その他 | 03:40 | comments(0) | - | pookmark |↑PAGE TOP
たとえばこんなプロローグ 【選抜チーム前章】
選抜チームがどうやって選抜されたのかネタ。
辻褄合わせようとしたらこんなことに。
作者選抜チームのシリーズに組み込むか迷いましたが単発で。
前日譚としてこんなことがあったカモネー的な。


嶋田さんは繋心呼びでよかったんでしたっけ…。

オチは雑誌初出時のネタ。単行本掲載時には修正されてるかな?


+++++++++++++++++++



春の高校バレーの宮城県代表校が決まってさほど日も経っていないある夜。

居酒屋おすわりでは、烏野高校排球部顧問の武田一鉄とコーチである烏養繋心、
そして町内会チームとして練習試合をして以来縁が出来、時間があれば予選の応援に駆け付けていた滝ノ上祐輔と
そして山口のジャンプフローターサーブの師匠である嶋田誠がささやかな祝盃をあげていた。

歓びのあまりいつもより早いペースで呑んでいた四人だったが、
酔いが回りきり沈没する前に。
「じゃーん! どうだ!」
嶋田は、烏養に向けてなにやら選手の名前を羅列した紙を掲げて見せた。

「何が、どうだ、なんだよ」
「俺的ベストメンバーを考えてみた!」
「さっきから何を書いてたのかと思えば……
どれ」
呆れながらも烏養はその紙を受け取り、書かれた名前を眺める。

ウイングスパイカー 白鳥沢学園高校 牛島若利
   烏野高校 東峰 旭
   角川学園高校 百沢雄大

ミドルブロッカー 伊達工業高校 青根高伸
  白鳥沢学園高校 天童 覚

セッター 青葉城西高校 及川 徹

リベロ 音駒高校 夜久衛輔

ふんふんと頷きながら確認していったが、最後の行でぴたりと動きを止めた。

「宮城勢だけじゃなくて音駒のリベロも入ってるじゃねーか」
ぺしぺしとその名前の部分を裏手で叩く。
嶋田は、あー、うん、と唸りながら、そろりと視線を逸らした。

「宮城で固めようかとも思ったんだけどな、いろいろ試合でリベロ観てきたけどそん中で一番だと思ったから、越境した」
その言葉に烏養は
「なるほどなァ。」
と一度納得して見せ、
「で、本音は?」
と訊いた。ずいと身を乗り出してまで。
嶋田は居住まいを正して正座になり、
「リベロ以外を書いたところでチームとしてまとまりそうがなかったので知ってるリベロの中で一番しっかりしてそうな夜久君を選びました」
とぶっちゃけた。

優秀なリベロだと思ったってのも嘘じゃないけどな、との言葉に、
「そこは疑ってねーよ。
つーか俺から観てもレシーブ特化の音駒でリベロやってるだけあって実力半端ないって思ったしな」

西谷ではなく夜久を選んだ一番の決め手はそこなのもわかる。
西谷は確かに天才だが、感覚的に生きているきらいがあり、
男前な性格だとは思うがまとめる能力はないように見受けられた。
物怖じしないため東峰が恐縮し萎縮するだけのメンバーになりそうだ。
西谷は二年生であるが三年生の東峰をよく叱咤激励している。
基本的にはそれがいい方向に作用しているのだが、初めて組むチームの中ではどうなるかわからない。

主将でも副主将でもない夜久ではあるが面倒見がよさそうだなというのは合同合宿で見かけた時に思った。
そういう意味では嶋田の言葉は間違っていない。
しかし。

「練習試合で一回観たきりだよな?
よくわかるな」
「接客で鍛えたこの審美眼を舐めてもらっちゃこまるぜ!」
「それを言うなら観察眼だろ。
じゃあ試合見たことない筈の角川の百沢が入ってるのは」
「将来有望な一年生を才能の中にぶっこんで進化させたいって意図かな。
烏野とも当たったんだよな?
春高予選の選手一覧見て気になってたんだ。
身長が高いってだけで物凄いアドバンテージだしな。
あとはいい環境にさえ置けば化けるぜ」
「お前だって有望な一年生を弟子にしてるじゃねーか。
山口は入れてやらねーのか?」
その質問に、痛いところをつかれた、とばかりに嶋田は「あー」と眼を瞑った。
「忠は……総合力じゃどうしてもなあ……。
入れるにしても控えでピンサー要員かな?
他の面子が面子だけに畏縮して才能に潰されても困るしなあ」
「過保護か。
ブロックも月島じゃなくて天童なのか」
「牛島くんがストイック過ぎるっぽいから同じ学校のちゃらけた感じの子を一緒に入れたら中和されるかなって」
「されると思うのか?」
「ふ、普通に話相手はするんじゃないか?
試合中も仲良さそうだったし」
「なかがよさそう……」
気さくに話し掛けている様子は確かに悪くはないだろうが、牛島の方がそういう物差しで生きているかどうかあやしい。

賑やかし役は確かに必要だろう。それが牛島サイドの人間であればなお良い。

及川が牛島を敵視しているというのは一部では有名な話だ。

「だから鉄壁が一枚だけなのか」
「ブロックって言ったら伊達工だから入れたかったんだよな」
インターハイ予選で視た青根の迫力は今でも嶋田の印象に残っている。
「せっかくだしせめて二枚揃えたくもあったんだがなー。
リードブロックとゲスブロックの組み合わせってどうなるかわかんねえし」
「生意気そうな新主将の二口より無口な青根を選んだのはポジションもあるだろうけど波風をなるべく立たせないようにするためだな」
なにせセッターが及川だ。
実力は確かなのだがチームメイト以外に対して敵意を向けると言うか煽っていっているというか、そんな感じの態度がちらほら見受けられた。
選抜チームとして『チームメイト』になったらちゃんとしそうな気がしないでもないが、
如何せん彼にとってのラスボスに近い存在であろう牛島がいるので未知数だ。
ならばなるべく害のなさそうな人間を選ぶに限る。

「まあでもいいバランスなんじゃないか?
戦力的にもチームワーク的にも」
烏養にそう評価され、
「どやあ」
嶋田は得意そうに胸を張った。
だが、
「どや、じゃありません。
うちの子達からは一人しかいないじゃないですか!」
武田からクレームが入った。

「むしろ一人も入れないのもって思ったから東峰入れたんだけどな」
「一人選ぶとなると東峰なんですね」
「エースだしな。
及川くんもサーブとかの攻撃力あるけどスパイクに火力が欲しくて」
嶋田の解説を聞き理解はできるが納得できなさそうな武田の様子に、
「じゃあ先生ならどんなチームを作るんだ?」
烏養は矛先を変えるように仕向けた。

平素の武田であれば烏養の意図に気づいたであろうが、良い感じに微酔い気味だったためそこまで思考が回らない。
「そーですねぇ」
武田は少しだけ悩み、嶋田に倣ってすらすらと紙に名前を書き始めた。

ウイングスパイカー 梟谷学園高校 木兎光太郎
  青葉城西高校 岩泉 一
 烏野高校 澤村大地

ミドルブロッカー 音駒高校 黒尾鉄郎
烏野高校 日向翔陽

セッター 烏野高校 影山飛雄

リベロ 烏野高校 西谷 夕


「……こんな感じでしょうか」
「ほぼほぼ烏野のやつらだな」
その中に一つ混じった名前に、嶋田は眼を瞬かせた。
「梟谷の木兎って、全国五本の指に入るエースか。東京の。
こうして選んだ理由を訊いても?」
「はい。
彼のプレイは人を惹き付ける魅力がありますし、
エースとしての日向くんの師匠でもあるようですしね」
見てきたような言い方と、日向の師匠、の言葉に
そういえばわざわざ遠征してまでどこぞの学校と合同合宿してきたのだという話を思い出した。
隣で既に潰れ頬杖をついて寝こけている滝ノ上が車を運転して東京まで連れていったというあれは確か。
「そういや何回かやってたっていう合同合宿は梟谷のグループなんだっけっか。
なるほどなー」
「ああ、お前は逢ったことないんだっけ。
なのによく知ってたな」
「お前ら応援するようになってから月バリ隅から隅まで読むようになったからな。
特に高校生の選手をじっくりと。
烏野が全国行くって信じてたから他の県の有力選手もチェックしてたぜ!」
「嶋田……!」
酔いもあって涙腺が弛くなっているのか感激のあまりうっかり涙が零れそうになり、烏養は慌てて武田に向き直る。

「黒尾が入って月島は入れてないのか」
「ミドルブロッカーが二人となるとどうしても。
セッターは影山くんにしたいし、そうなると日向くんとのコンビネーションがないのは惜しい。
けれど不確定要素の多い二人ですから、守備を強化したい。
ブロックの要の存在として月島くんにブロックを教えたという黒尾くんかなと」
「だからウイングスパイカーに澤村なんだな。
あいつのレシーブは安定してるからな」
「岩泉もそうだな」
「岩泉くんは、それもあるんですが」
武田は頬を掻き、困ったように笑った。

「影山くんの中学時代の先輩とのことなので、一度、彼の相棒だという及川くんを抜きにして改めて交流して欲しいと思いまして」
「……なるほどなァ。先生らしい考えだ」

嶋田は烏養に白紙の紙とペンを差し出した。
「んで、繋心ならどんなチームを組むんだ?」
「あ? そうだな」


ウイングスパイカー 条善寺高校 照島遊児
 烏野高校 田中龍之介
 青葉城西高校 京谷賢太郎

ミドルブロッカー 伊達工業高校 鎌先靖志
 音駒高校 灰羽リエーフ

セッター 孤爪研磨

リベロ 青葉城西高校 渡 親治


烏養は書き終えるとくるりとペンを回した。
「……とまあこんな感じかな」
嶋田はメンバーを一人一人確認し
「……お前実は相当酔ってるだろ」
との結論を下した。

コンセプトはむしろわからなくもない。
ただ、音駒高校の灰羽とやらは知らないが、あの音駒のセッターが裸足で逃げ出したくなるような面子だなあ、というのか率直な感想だった。

まあ、所謂お遊びのようなもので、実際にチームを組むことなどないだろうが。



「ところで先生。」
酔いが醒めた烏養はペンを走らせ武田が書いた名前にちょちょいと訂正した。
「音駒の黒尾の名前間違ってるぜ。
鉄『郎』じゃなくて鉄『朗』な」
「あっ」
| 小話;その他 | 03:10 | comments(0) | - | pookmark |↑PAGE TOP
ミニゲームを始めましょう。 【選抜チーム】
作者選抜チームがまとまるまでその3。
夜久さん中心。
及川さんは基本やさぐれてます。(岩泉さんと影山が別チームで同じチームには牛島さんがいるため)

やっとバレーボールを始めるようです。




+++++++++++++++++++++




軽い準備運動の後に、半分ずつに分かれてミニゲームを行おう、と話になったのだが、
バランスよくチームを分けるのはどうしたものかと主将になった及川は頭を抱えていた。

副主将に選ばれた夜久はその隣でバレーボールを手の中でくるくると回しながら、チームメイトの顔を順繰りに眺めていき、
最後に、少し離れた場所に立つ男を見上げた。
その大きな掌の中にもバレーボールが収まっている。

「あのウシワカと同じチームで戦う日が来るなるなんてな」
「……嫌なのか?」
悪意も敵意も感じないながらも意味ありげな夜久の言葉に、牛島は首を傾げた。
「嫌、って言うか」

東峰は耳に入ってきたその会話に
(……もしかして)
と何かを察した。

夜久は、東峰が所属する烏野高校バレーボール部が誇る天才リベロ・西谷が一目置くような人物だ。
と、なると。

「せっかく全国三本の指に入るエースが傍にいるのに
そのスパイクを受けらんないのが残念に思えてさ」

にやり、と不敵に笑みを浮かべたその表情は、東峰が良く知っている人物と重なってみえた。

(やっぱり西谷と同じ人種だ……!)

西谷も、対戦したことはないが凄いと評判のスパイカーと同じチームになったなら似たようなことを考えそうだ。
否、絶対にそう思う。
そして今の夜久のようにズバッと本人に言うに違いない。


東峰は衝撃のあまり
「リベロってあーゆータイプばっかりなのかな」
と呟いてしまった。
「……違う、と思います」
近くに立っていた寡黙な青根から突っ込みのような言葉を返され、
「だ、だよね」
少し冷静になれたが。
音駒にはもう一人、一年生のリベロがいたのを思い出した。
ゴールデンウィークに少しだけ言葉を交わしたが、彼はどちらかというと東峰と近いタイプのようだった。そういうリベロもいる。
西谷と夜久が特別だと言うわけでもないだろうが。

牛島は挑発するような視線と言葉を受け、ゆっくりと頷いた。
見る人が見れば余裕綽々と感じられるような尊大な態度で。
「そうだな。
俺もお前の実力を量っておきたい。
口だけが達者なわけではないのだろう?」
「それは実際に相手して判断してもらうしかないかな」
気分を害した様子もなく普通に返事をした夜久に、二人の会話を聴いていた天童はへぇ、と感心したように声をもらし、ぱちぱちと目を瞬かせた。

「夜久クンは若利君の天然上から目線気にしないヒト?」
その問いに、夜久は
「言い方はちょっとアレかもだけどそれだけの実力はあるし、間違ったことは言ってないだろ?」
としれっと返す。
「俺は牛島のプレイを知ってるけど、牛島は俺の事知らないんだろうし。
こうして選ばれたからって牛島のお眼鏡にかなうとは限らないしな」

この選抜チームの中では夜久だけが東京の学校で、他は全員宮城の高校の選手だ。
同じ地区であれば試合を目にする機会も、評判も耳にすることもあるだろうが、
宮城勢の中では、練習試合や合宿で実際に戦った事がある東峰ぐらいしか夜久の事は知らないだろうし
夜久の方も知っているのは東峰と、全日本にも選ばれた牛島と、牛島と同じ学校で全国大会に出場していた天童の事ぐらいだ。
及川は月刊バリボーの記事を少し読んだぐらいで詳しくは知らない。

青根がブロックを得意とする学校の鉄壁の一枚ということは、調べてすぐにわかったが、百沢の事は全く知らなかった。
孤爪が日向から来たメールを読み「翔陽が二メートル相手に勝ったって」と教えてくれた、その対戦相手のようだが。

プレイも性格も、だからこれから見極めて行くつもりだった。
既にいくつかわかったこともある。
及川が牛島をやたらめったら敵視していることだとか。
東峰も青根も、強面ではあるが性格はそうでもないだとか。

「夜久、さん」
その青根が、躊躇いがちに名前を呼んだ。

夜久の言葉が引っ掛かっていた。
同じチームだから無理、ではなく。
「同じチーム、だからこそ、
練習で」
「好きなだけ若利君のスパイク受けられるヨー?
若利君、練習だからって手を抜けるほど器用じゃないからネ」
たどたどしさにもどかしくなったのか奪うように台詞を繋げた天童の言葉に、
青根はそれを言いたかったのだとばかりに力強くこくんと頷く。

それを聴いた途端、夜久の眸がきらりと煌めき、ぐるんと首を回すと及川を視た。

「及川! ミニゲーム、牛島と同じチームになっていっぱいトス上げろ。
チーム力を上げるには、なにはともあれまずはエースとセッターの連携を仕上げないとだしな!」
「なんかもっともらしいこと言ってるけど夜久ちゃんがウシワカのスパイク捕りたいだけだよねぇ?!
ウシワカちゃんも隣でしたり顔しないで!」
「必要な事だろう?」
「そうだけど!
基本なんもしてないよね?!」
「なにもしてないことはないつもりだが」

夜久の言っていることは間違ってはいないが直前のやりとりのせいで台無し感がある。
それに。

「大体ウシワカは左利きだけど相手チームには左利きいないじゃん!
変なクセついたらどーすんのさ」
「守備でブロックの動きの確認もしたいってのもあるし
それは左利きだろうが右利きだろうが関係ないだろ。
東峰にもそっち入って貰うし」
「えっ? 俺?!」
上擦った声を出し自分を指差す東峰に、夜久は驚かれたことに驚いた。
「何で吃驚してるんだよ。お前も烏野のエースだろ。
牛島と一緒に及川にトスの調整して貰え」
「あ、東峰君も一緒なのか」
胸に手を置きわかりやすく安心した及川に、天童はやれやれと思いながら
「東峰だけにじゃなくて若利君にもちゃんとトス上げてあげてね」
一応忠告しておく。
「そのへんの公私混同はしないよ!」
「「……」」
夜久と天童は何とも言えない眼差しで及川を見つめた。
「信用ないな!」
「したいんだけどネー」
「行動で示して信用させてくれよ」
「ぐぬぬ……」
天童と夜久のコンビネーションに歯噛みをする。
牛島に対しきつめにあたっていた自覚があるため自業自得だとはわかっているが。

「このチームには俺の味方はいないのかな?!」
「た、田中が前に『コートの“こっちっ側”にいる全員もれなく味方だ』って言ってたよ?」
東峰が謎のフォローを入れる。
「坊主頭くんは男前だよね!
いい言葉だけどでも今はそういう話じゃないから!」
「百沢、お前はどうする?」
夜久に尋ねられ、百沢は
「どうする、というと?」
意図がわからず聞き返す。
「外で観てるか? それとも中でブロックに参加するか?
ってこと。
……及川が容赦なく集中砲火浴びさせるかも知れないけど。」
初心者の百沢は狙うべき穴だろう。
そこを、及川や牛島が見逃すことはない。
「……後ろには夜久さんがいるんですよね?」
「おう。
ホームランにならないならブロックアウトのボールも全力で拾いに行ってやる。」
全部捕れるとは限らないけどな、と補足されるが。
「なら、中で戦います」

「その意気やよし!」
天童はずびしと百沢を指差した。
闘志を讃えてだろうが。
「何様なんだよ天童。
ちゃんと意識して視るのも練習になるから途中で抜けるのもアリだからな?
百沢」
「はい。」
「……気付いたところは、指摘する」
「頼むな、青根」

そうして試合を始めたのだが、中盤、タイムアウトという形で休憩に入った時に
及川はねえねえと夜久に話し掛けた。

「夜久ちゃん、これ、ミニゲームじゃない」
「チームわけの段階で気づかなかったのか? 及川」
攻撃対守備の練習だな、と言われ、
「じゃあ結局後でまたミニゲームのチームわけ考えないとなのか!」
と及川は項垂れた。
その落ち込みように
「……どんまい」
夜久は、さすがにちゃんと協力するか、と反省した。
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火神大我を形成するいくつかもの
の中の最も重要なうちのひとつ。

例の如くいろいろ捏造しています。

なんでこんなカオスなメンバーかというと某シリーズの傍流というかまあそんな感じだと思っていただけたら。
人数多すぎると描ききれないので選抜ですが。




+++++++++++++++++++++++



かしゃん。

ストリートバスケットボールのコートの隅にいた今吉にバスケットボールが当たり、
眼鏡が弾き飛ばされ地面に落ちた。

スポーツ用ではなく普段使いの眼鏡で激しいスポーツであるバスケットボールをプレイしていたのだから、いつ起きてもおかしくはない事故だった。
しかも一試合終わった直後で気を抜いており、
折り悪く顔の汗を拭うために眼鏡を外して手に持っていた。

今吉本人は呑気に「あーあ」と呟くだけだ。
プラスチックレンズのため、ガラスレンズのように落下による衝撃で割れたりはしない。
だが、一応コーティングもしているものの場合によっては傷がついてしまったかも知れない。買い換える程ではないだろうが。
とまで考えた末の「あーあ」である。

のこのこと眼鏡を取りに向かおうとする今吉にコートの中から
「すみません今吉さん!」
と謝罪の声が届く。
スティールをしようとして力を入れすぎてボールを場外に飛ばしてしまった張本人である高尾だ。
頭を下げるその姿に気にするなと右手を挙げて応えると、
今度は
「今吉さん大丈夫か?! ですか?!
眼鏡は俺が拾うんで動かないでくれ、ださい!」
と、高尾にスティールされた側の火神がすっ飛んで来た。

今吉はその勢いに気圧されて足を止めたが、火神が血相を変えた理由にすぐに思い至った。

「そんな慌てる必要ないでー。
ワシはジブンのお師匠さんとちゃうよ」
「あ」
その言葉に、火神ははっと我に返る。
「師匠?
ああ、アレックスさんのことか」

コートのわきに置かれたベンチに座り炎天下の下でライトノベルを読んでいた黛は顔を上げた。
一応ストリートバスケットボールにも参加していたし、観戦もしていたが、
ライトノベルの発刊速度と発売する量に買ったまま読めずにいた積ん読が増えてしまったため
隙間をみて消化に勤しんでいた。

大荷物の中身がそれと知り呆れた表情を隠しもしなかったのは花宮である。

「確か、病気で視力悪なってプロ続けられなくなったんやったな?
ワシは眼鏡で矯正しとるだけで試合出れとるやん?
裸眼でも全然視えへんわけやない。
心配せんでえーよ」
「う。スミマセン」
「謝る必要ないでー心配してくれてあんがとさ……こら花宮なにしようとしとんねん!」
「裸眼でも大丈夫なら壊れても問題ないかと思いまして」
「だからって踏もうとすんなや」
「そこまでちゃんと見えるんすね」
「火神、そこ感心するとこじゃないぞー。
けど真ちゃんなら判別つかなくなってる距離かもなー」
「緑間のやつそんなに眼悪いのか」
「去年合宿かち合ったの覚えてっか?
あそこの風呂場で横並びで入って間にあったライオンの顔を俺と間違えるぐらい?」
「湯気とかのせいとかじゃなくてか?」
「それもあるかもな!
俺が凛々しすぎてライオンと間違えたとか?」
「ないんじゃないか?」
「そりゃないんちゃう?」
「ねーだろ」
黛、今吉、花宮にほぼ同時に否定され、高尾は「えーそっすかー?」と不満そうに呟く。
高尾の言葉に、火神が緑間に変に優しくなったりしたら面白いことになりそうだなーとこっそり思いながら。

「花宮……さん、冗談でも眼鏡わざと壊そうとするとか駄目だ! です!」
「やんねーよ。
今吉サンのモンをわざと壊した日には後が怖ぇ」
「そっか」
ほっと安堵の息を吐く火神に、
「それも、アレックスさんの事があるからですか?」
と、コートから出てきた桜井は尋ねた。
もう試合は中断ではなく終了だろうと。

火神は、こくりと深く頷く。
「アレックスが、眼鏡は義手や義足とまではいかないけれど補聴器や入れ歯みたいなものだから身体の一部みたいなものだ。
ぱっと見その人がどれだけ視力が悪いかわかりづらいだろうけど、眼鏡がないと死活問題の人間だって少なくない。私みたいにな。
だからイタズラとかでも眼鏡にだけは手を出すなよ。
って、口をすっぱくして? 耳にタコができるぐらい? 言われた」
「使い方間違ってないですから疑問形である必要はないですスミマセン!」
「桜井も謝る必要はねーよ。むしろThank Youな」
真っ直ぐに感謝され、桜井は表情を和らげた。
心もほぐれたためか話を聞いた感想がポロリと口から零れ出る。

「アレックスさんは火神サンのバスケだけじゃなくて人生の師匠でもあるみたいですね」

桜井の言葉に、火神は一瞬きょとんとしたあと、破顔した。
太陽の下、大輪の花が咲くように。



火神は、子供の頃から親との交流が少なかった。

母親は物心ついてしばらくしていなくなったし、父親は仕事人間だった。
だから家族との交流を通じて覚えていくような常識を知らなかったりした。
外で遊ぶのが好きだった子供だったのもあり
本をほとんど読まず、テレビもあまり観なかったため、火神の知識は学校で学んだことぐらいだ。
だがそれでは一般常識に欠けてしまう。

氷室やアレックスに逢った当時、火神はおそらく非常識の塊だった。
幼さも相俟って。

日本にいた頃はそれなりに常識的だったはずなのだが
言葉のわからない自由の国に戸惑ったからという部分も少なからずある、と思いたい。

思ったことをずけずけと言ってしまうのはそういう性格だからで片付けられはするが、
とにかくアレックスはバスケットボールの指導をしていく中で火神のそういった部分に気がつき、
明らかな間違いを訂正したり
無知であるが故の行動だと判断した時にはその空白部分に彼女なりの常識を叩き込んだ。

それは、火神がずっとアメリカで暮らすのならば有効なものばかりだったのだが、
父親の都合でアメリカに来ていた火神は父親の仕事の関係で日本に戻ることになった。

日本での常識をあまり知らないままで。

だから自分が住む父親と暮らすはずだったマンションの一室を訪れたチームメイトや知り合いが驚く意味がわからなかった。
アメリカでは一軒家で暮らしていたため前より狭くなったなとすら思っていたから。
東京の、自分が暮らす部屋の家賃など知ろうとも思わなかった。
ごく普通の、一般的な住まいだとばかり思っていた。
金銭的な面であまり不自由はしていなかった上、家族と生活した記憶がないため、
ごく一般的な日本の家庭というものがわからなかった。
友人の家に遊びに行ったことが一度もなかったのも、おそらく理由の一つなのだが。

普通の家庭で育った子供が持っているものを持っていないことも
その辺の人よりも多く持っているものがあることもだから今でもよくわかっていない。



細かい部分はすっ飛ばしてアレックスが自分の人生の師匠でもある、と説明した火神の事情を、
歳上の三人は察した。
高尾と桜井もなんとなく理解しはしたが、
感想はというと、高尾の
「火神の性格はアメリカで培われたっていうよりアレックスさんに育まれたって方が正しいのかな」
の一言に尽きた。

そんな話をしたあとで、いい頃合いだとストリートバスケットボールはお開きにし、六人は火神の家に移動していた。
台所では桜井を料理長として高尾と今吉が料理を作っている。
黛はソファで寛ぎライトノベルを読み、
花宮はその様子を横目で眺めながら、
「おい」
と、手持ちぶさたで身体を揺らしながら台所の方を気にしている火神に声を掛けた。

「なんだ……ですか? 花宮……サン」
「とってつけたような敬語は逆にカンにさわるから話しやすいように話せ。
お前、自他共に認めるバスケバカだよな?」
「うす」
「この、バスケットボールは高校で終了しましたって態度のセンパイとは縁を切ったりしないのか?」

花宮の質問は微塵も思ってもいなかったことだったらしく、
火神は暫く固まったままだった。
返答に窮したわけではなく質問の意味そのものを理解するのにかかった時間だ。

「知り合ったきっかけはバスケでも、そっから離れても、黛さんは黛さんだから出来ることなら縁は切りたくない、です。
黛さんが嫌なら仕方ない、けど」
「それは俺が好きだと言うことか?」
慣れた動作で栞を挟んで本をぱたりと閉じ、黛はむくりと上半身を起こし、尋ねた。
火神はこくんと即座に頷く。
「うす。
面白いし、一緒にいて気を遣わなくてすむ……
っていい意味でだ、です!」
「わかってる。そういうのを気のおけない仲と言うんだ。
俺にとってもお前はそうだな。
お前とやるバスケは嫌いじゃないしな。
大学ではすっぱりと辞めるつもりだったんだがな」
「え?!
あ、いや、バスケをしてもしなくても黛さんは黛さんだけど」

こういう風にバスケットボールを離れても仲良くなれて良かったと思っている。
それだけじゃわからない良いところも悪いところも知れたから。
花宮など、バスケットボールだけでの繋がりであれば通りすがっただけの他校の選手、で終わっただろう。
決して一緒にいて安心する相手などとは言えないが、
刺激を与えてくれる存在ではあり、生活にスパイスが加わった感じだ。

バスケットボールだけでしか繋がれそうにない相手もいるが、それもそれで形の一つだ。
火神にはアメリカにもバスケットボールやサーフィンを通じて知り合った人間も少なからずいるが
その全員とプライベートでも仲良くしていたかというとそうでもない。

仲良くなりたいという想いと、ちょっとしたきっかけが必要で
ずっと付き合っていけるような相性のよさがなければ続かない。

今この場にいるメンバーは、時折厳しさもみせるがそれは理不尽なものではなく
火神にはストレスなく付き合える人達だった。

「できました!
お待たせしてスミマセン!」
「そんな待ってないから謝るなって。
手伝わなくて悪い」
「主役を手伝わせるわけにはいかねーって」
「せやね。主役やないのに手伝わない連中もおったけども」
「人数多くても邪魔になるだけだろ」
「足手まといになりたくないですしね。
というか俺はアンタに無理矢理参加させられてるだけなんですけど」



当日はインターハイ真っ只中ということで、後日、火神の休みの日に時間を作って集まり、こうして誕生日を祝ってくれるような人達だ。

誕生会なんてやったことがない、という火神の何気ない呟きを拾った高尾が画策したようで、
「当日じゃなくて悪い」
と恐縮していたが当日には祝いの言葉をくれてそれだけで充分でもあったし、何より、

日にちは関係なく、その心が嬉しく、何物にもかえがたい、最高のプレゼントだ。
| 小話;その他 | 15:18 | comments(0) | - | pookmark |↑PAGE TOP
チームカラーを考えましょう
作者選抜チームがチームとしてまとまるまでのエトセトラ。
基本会話だけ。司会進行は及川さんと夜久さん。東峰さんもちょいちょい。
バレーボールをさせようと思っていた片鱗がある。

決めましょうとは言っていない(オチ)。

Twitterで公表されてた第三のチームについての言及もあります。

監督は公式発表がないので不在ですがにっちもさっちもいかなくなったら勝手に誰かを就任させるかも知れません。




+++++++++++++++++++



牛島の一言により満場一致でチームの主将が決まり、
選ばれた及川は、ホワイトボードの前、主将決めの進行をしていて副主将に就任した夜久の隣に立った。
一応就任の挨拶でもしとこうか、と考え表情をきりっと引き締めたところに
「及川、晴れて主将に就任したところで今日の練習方針考えて欲しいんだけど」
と夜久に声を掛けられた。
「だからなんで夜久ちゃんが仕切るの?! いいけど!」
「いいのんだ?」
怒りながらも承諾の意を表す及川に東峰は苦笑した。
案外いいコンビなのかも知れない。

及川が唇に指を当て思案したのはほんの少しで、直ぐに人差し指を立てくるくる回して提案する。
「そうだね。
じゃあまず基礎練習で身体あっためて、
それからそれぞれの実力を知るためにミニゲームしよっか。」
「よし、じゃあ」
「待って!」
及川の言葉に夜久が視線を向け、それに従うように立ち上がろうとした他のメンバーを制するように、及川は手を前に突き出した。

「でもその前に、もう一個重要な案件があると思うんだ。
のでもっかい着席!」
「着席っても椅子ないんだけどネー。
そんなに重要なもの?」
挙げ足を取りながらも素直に腰を下ろし直した天童を見て
「そう!」
及川は満足そうに頷く。

「チームならちゃんと同じユニフォーム着ないとでしょ? それぞれの学校のユニフォームとかじゃなくて。
特に夜久ちゃんと東峰くんなんか敵チームのメンバーと同じユニフォームとか完全に事故ってるじゃん。
俺と岩ちゃんはちゃんと二着のユニフォーム分けて着てるのに!」
今は各各動きやすい練習着を着ているが最初に集まった時はそれぞれの学校のユニフォームを着ていて
統一感のなさが凄かった。
それはもうひとつの選抜チームもだが。

「あーゴメン。
まだ烏野はユニフォーム一種類しかないんだよなあ」
「二着あったとしてもあっちにリベロがいるからうちみたいにごっちゃになるだろうけどな」
後頭部に手を置きへこりと謝る東峰を擁護するような夜久の言葉に、初心者の百沢はようやく違和感の理由を理解した。
「なるほど違うチームになったから二種類あるユニフォームを色違いでってなっても
リベロは違う色を着ることになるからだから一周回って夜久さんは向こうの同じ学校の人と同じ色のユニフォームを着てたんですね。
ややこしいです」
「いや難しく考えないで結構単純だから」

要はリベロは同じチームの仲間とは色違いユニフォームで、敵チームとは同じになっちゃうってだけだから、
と及川が丁寧に説明しているのを横目に夜久は西谷のユニフォーム姿を思い浮かべていた。

「烏野、もう一着作るとしてリベロと同じ配色になるならスガくんとチビちゃんと坊主の子ぐらいしか似合わなそうな……」
その言葉に東峰はどんよりと気を落とす。
「うん、それだと俺が一番浮くよね……」
「そうは言ってないから落ち込むなって!」
夜久は慌ててフォローに入る。
主将くんとどっこいどっこいじゃないかな、とは、慰めにならないだろうから言わないでおいた。

それにしても。と、夜久は腰に手を当て、小首を傾げた。
「やっと、スガくんが
『旭はああ見えてへなちょこ……ヒゲちょこだから
なにかあったらフォロー……はしなくていいから気合い入れてやって』
って言ってた意味がわかったよ。
試合中はあんなにどっしりしてるのになあ」
「スガが?!
さっきの西谷といい大地といいなんで?!
俺ってそんなに頼りないのかなあ」

同じ練習場所を二分割して使っているのでもうひとつのチームの様子も窺うことができる。
向こうのチームに所属する二人は東峰の様子を心配していたらしく、
両チームが主将を決めで一段落した先刻、夜久に挨拶しに来たのだ。

「待って俺主将なのに爽やかくんにもさっきの二人にもなんにも言われてないんだけど?!」
及川がショックを受けているようなのでこっちも落ち着かせないとなんねーのか、と夜久は溜め息を吐いた。
この様子では及川の目を盗んで岩泉がすまんがよろしくと言ってきたことは黙っていた方が良さそうだ。

「爽やかくんがスガくんのことなら、スガくんチームが発表されたと同時に連絡くれたから及川が主将に決まる前だから。
なんか『頑張って』とも言われたけど」
話を聴いていた百沢は、
「主将は特定の人だけの世話はできないだろうからと夜久さんに頼んだのでは……?」
との解釈を口にした。
「そう、かな? そっかそっか」
及川は納得したようで、なるほど、と頷いている。

天童は牛島に身体を近付け内緒話のように口許に手を当てた。
だが明らかに及川に対し聞こえよがしだ。
「チョットー若利くん、あのヒト一年坊主に気を遣わせてるヨー
情けないネー?」
「うっさい牛島! 天童!」
「俺は何も言っていないが?」
牛島は真顔で首を傾げる。
本人はまるで気にしていない風であるがとんだとばっちりだ。

及川は気をとり直すようにぱんぱんと軽く手を叩く。
「話を戻すよー。
それで、ユニフォームの色、つまりはチームカラーを決めようって話なんだけど」
「ユニフォームのデザインもすんのか?」
夜久の問いに及川はふるふると顔を横に振る。
「さすがにそこまではしないよー。今日は色を決めるだけ。
ユニフォームのデザインは下手に素人がやるよか本職に頼んだ方いいのになるだろうしね。
ちなみに俺は水色がいいかなって思ってまぁーす」
「それ、青城の色だったよな?
だったら俺は赤を推すぞ?」
そのまま決まってしまうのもどうかと思い、夜久は反射的に音駒のイメージカラーを口にした。

「じゃあ間を取って紫色だネー」
「ちょっと天童その間の取り方おかしいよね?!」
だが天童の意見に同意する人間が現れた。
「このチーム白鳥沢が二人いるし多数決でそれでもいいと思うよ?」
ほえほえしながら手を挙げ意見を述べたのは東峰だ。

「そう言うこと言うなら、青根ちゃんと百沢ちゃんのとこも大きくくくって緑じゃん! うちもペールグリーンって言えなくもないし多数派!
よーしじゃあ緑にしよう!」

三校とも宮城の学校だし、緑の色が多いのは杜の都にちなんで的ななんかなのかな、と思いつつ、夜久は
「ならいっそ全部混ぜて黒とか」
と茶化した。

それを聞いた東はなぜか嬉しそうに笑う。
「混ざりあった先は黒、って武田先生もそんなこと言ってたな〜」
顧問の先生のありがたい言葉を思い出してのことらしい。

「だが向こうのチームがそうなるんじゃないのか?
烏野のやつが多いだろう」
冷静な牛島の指摘に、あ、議論に参加するんだ、と内心驚きつつ、従うのもシャクではあるが一理あるため
及川は
「だったら対になるようにこっちは基本を白にしたいかもね」
と軌道を変えた。

だが。

「真っ黒なユニフォームか……黒尾は似合いそうだけど木兎に似合うような似合わないような……岩泉はカッコ良くなりそうだな」
「夜久ちゃんはなんで他のチームのこと考えちゃってるの?!
先に! こっち!」
「んなこと言われてもなあ」
夜久の思考がいちいち脱線してしまうのは正直どうでもいいからだ。

「三年間白と赤だったしなあ。他の色って言われても」
「赤って第三勢力が選びそうな色だよね。
渡はともかく狂犬ちゃんとかスゴク似合いそう」
及川の言葉に夜久はああ、と表情を曇らせた。
後輩の苦労を慮って。

「研磨が全力で逃げ出したがってるチームか……
リエーフは大丈夫なんだろうな。他校のヤツに迷惑かけてないといいけど」
「えっ第三勢力って?!
他にもチームあるの?!」
「あれ? 東峰は知らなかったのか。
ここにはいないけど、後からもう一チーム出来たんだよ。
お前のとこの元気な坊主くん……山本と意気投合してたヤツもそのチームにいたはずだけど」
「田中が?! そっか、よかったなあ〜」
「……鎌先先輩も……います」
「青根ちゃんが喋った……!
いや試合中喋ってたけども!」
「確か三年がその伊達工のやつだけだったよな。
なら主将決めで揉めなさそうだな」
夜久がそう水を向けると
「……鎌先先輩が……主将……?」
青根は眉根を寄せた。眉は無いのだが。

「青根ちゃんが目茶苦茶不安そうな表情になったんだけど」
「どんな先輩なんだ」
この中では夜久だけが東京の高校のため、烏野以外のチームのメンバーのことはよく知らなかったが、
ぱしぱしと青根の肩を叩き
「木兎にも主将できてるんだから」
という謎の慰めをしている。

「ちょっと夜っ久ん聴こえてんですけどどういう意味?!」
「今回主将に選ばれなかった事で察しろよ木兎」
「同じく選ばれなかった黒尾さんには言われたくありませんー!」

「あっちは無難に澤村くんが主将に決まったみたいだね」
「順当だな」
深く頷く夜久に
「あの二人も主将じゃなかったの?」
及川は重ねて訊こうとして
「あ、いいやなんとなくわかった」
向こうのチームの様子を視て自己完結したようだ。
「俺も改めて澤村くんと岩泉くんに挨拶しとかないとかなあ」
あの様子では恐らく副主将は岩泉だろう。



結局結論が出ないまま、時間がなくなる前に練習! という夜久の一声でチームカラーについては保留になった。

「ユニフォーム決まっちゃったら背番号でも一悶着ありそうだなあ……」
東峰はこっそりと呟く。
自分はこだわりがないから夜久とかぶっている3番は譲ってしまって全く構わないのだが、
1番が。
主将とは違って牛島が譲らない可能性があるなあ、と、ぼんやり思った。
| 小話;その他 | 00:55 | comments(0) | - | pookmark |↑PAGE TOP
(主に)及川さんと衛輔くん
WJ32号・213話のカラー扉絵の読者選抜、作者選抜ネタ。つまりはネタバレ。じゃんぷら試し読みで見られるので是非。

夜久さん贔屓、及川さんをいじる感じなので及川さんのファンには怒られる予感。
会話中心。


ネタが湯水のようにわいて出ているので多分シリーズになりそうな。
控え選手もいるんじゃないか的な妄想も追加していきそうです。

漫画じゃ手がおっつかない…



+++++++++++++++++++



選抜されたスターティングメンバー七人が集まってホワイトボードの前に座り、
さてでは、と代表して夜久が立ち上がり、重要な議題をボードにマジックで大きく書いた。


【まずは主将を決めましょう。】


「この中で主将やってんのは及川と牛島か。
じゃあ二人のうちのどっちかが無難かな」
「待って!
なんでいきなり夜久くんが仕切ってるの?」
「リベロだから主将にはなれねーからだけどなんか文句あるか?」
さくさく話を進めようとした出鼻を挫かれ、夜久は異議を申し立てた及川をギロッと睨んだ。
このメンバーの中では身長が低い夜久ではあるが、他のメンバーが座っているので仁王立ちで見下ろすことが出来る。
わざわざ立ち上がるまではしなかっただけ及川に対する苛立ちはそんなに大きくはない。

立っていたら、問答無用で蹴りが飛んでいたところだった。

大きな瞳の迫力に気圧され、及川はぐぬ、っと言葉を呑み込む。
「そっか。リベロはチームキャプテンになれないんだもんな。
じゃあ進行任せていいかな?」
東峰が空気を読んでか読まずかのんびりした声で頼み、夜久は「おう」と笑って返した。

「……ウシカワがキャプテンのチームなんて嫌なんだけど」
及川はせめてもの抵抗とばかりに体育座りで唇を尖らせそっぽを向く。

及川が夜久に突っ掛かってしまったそもそもの理由は、中学時代から倒すべき相手と定めていた牛島と同じチームにされてしまったからだ。
しかも、可愛いがくそ生意気な後輩である影山と、阿吽と称される程息の合った幼馴染みである岩泉が敵チームにいることも及川の機嫌を余計に悪くさせていた。

「俺としては若利くんをそんな風にいう人がキャプテンなのも嫌だな〜」
胡座をかき、身体を揺らしながら軽い口調で、けれど明確な敵意を持ってそう口にしたのは牛島と同じチームの天童だ。
烏野のメンバーが多い向こうのチームと違い、こちらのチームで同じ学校なのは牛島と天童だけで、
本来ならば牛島と他のメンバーとの間に入り潤滑油的な役割を担いそうな天童だが、
さすがに友人でもある牛島をそんな風に言われては臨戦態勢をとらざるを得ないらしい。

「その様子じゃ天童も駄目か。
なら消去法で東峰か?」
「はあっ?!」
完全に油断していた東峰は、いきなり矛先を向けられ目を剥いた。
「無理無理無理無理無理無理無理無理!」
東峰は無理の言葉に合わせてぶんぶんと頭を横に振り、夜久はそのあまりの勢いに驚く。

「なんでだよ?! お前烏野のエースなんだろ?
木兎とか、あれでエースで主将出来てるんだぞ。
青根は無口だし二年生だし、百沢に至っては一年の上に初心者だし、お前しかいないんだけど」
「いやいやいや普通に牛島か及川に頼もう!
経験者の方がいいって!」
「けどあいつら険悪っぽいしなー」
夜久がちらりと視線を向けると、今まで一言も発さずに成り行きを見守っていた牛島は首を傾げた。

「主将は及川でいいと思うが?」
そう言われて黙っていられないのが及川で、
「はあ?!
なにソレ! 譲ってくれるとでも言うつもり?!
腹立つ!」
とがなりたてる。
「適材適所だ。
即席チームをまとめあげるのは俺よりもお前の方が向いてると思ったまでだが?」
牛島はどこまでも穏やかなまで静かに裏のない言葉をつむぐ。
低い声と醸し出される威厳に、聞いている方は威圧感を感じてしまうのだが。

そのやりとりに、夜久はああ、険悪ってより及川が一方的に牛島を毛嫌いしているだけか、と理解した。

ならば決定だろう。
青根と百沢を視ると、二人は夜久の視線の意味を理解したのかこくりと深く頷いて返した。
異論はないようだ。

「牛島は大人だなー」
夜久が笑いながら言うと、及川が「ナニソレ及川さんが子供ってこと?!」と口を挟むより先に
「そんなことはない。」
と、牛島は否定した。
「だが、一つ我が儘を言わせてもらえるならば」
「うん?」
「副主将は夜久がいいと思う」
真っ直ぐに見つめられきっぱりと言われて、今度は夜久が驚く番だった。

「俺が?!」
「ソウダネー。
リベロじゃなかったら主将任せたかったヨ」
天童はうんうん頷き
「そっか、副主将にはなれるんだよな?」
東峰は何故かほっとしている。

夜久は、主将に決まった、役職的に相棒になる及川を困ったように見つめた。
つつがなく話を進めようとしたためとはいえ結構厳しく当たってしまった気がする。
「……及川はそれでもいいのか?」
及川からしても感情にまかせてしまった自覚があるのでばつが悪そうに首筋を掻いた。

「……ウシワカちゃんにやられるよりは断然マシだし、まあ消去法的に夜久ちゃんでいいんじゃない?」
ちゃん付け? と首を傾げつつも
「そっか。
ならよろしくな、及川」
この日初めて、夜久は及川ににっかりと満面の笑みを見せた。

「夜久はうちの大地と西谷を足して二で割らない感じで安心するなー。
ちょっと怖いけど。スガ味もあるし」
「すがみってなんだ」
| 小話;その他 | 03:05 | comments(0) | - | pookmark |↑PAGE TOP
精神的支柱の貴き不在 【澤村+夜久】
はるこう予選後の大地さんと夜久さんの電話でのやりとり。
澤村視点。
※コミックス未収録分のネタバレがあります※

メールや電話よりらいんやらいんつうわとかのがお財布に優しいのかなと思いつつシステムよくわからないのでどっちでも取れるように(多分)ぼやかしました。



++++++++++++++++++++




宮城の春高予選が終わってしばらく経った頃。
授業の合間の休み時間にスガに話し掛けられた。
珍しく、神妙な表情で。

「あのさ、大地。
大地の連絡先、夜久くんに教えてもいいかな?」
「別に構わないけど……
なんだ、やけに真剣な表情をしてたからどんな無理難題言い出されるのかと思った」
「いやー、なんとなく?」
スガはてへへと困ったように笑う。
俺もそれ以上深くは突っ込まずに困ったように笑い返した。

夜久が、俺の連絡先を知りたいと言い出したにせよ、スガが夜久に俺と話をさせたいと思ってのことにせよ、その理由はなんとなくだが想像がついた。
少し言いづらそうにしていたのにも。

音駒の、春高予選の三位決定戦の試合の様子を耳にしていたから。

その日の夜、早速向こうから連絡が入った。
他愛ないやり取りから始まり、近況、主に互いのバレー部の話に移り、大会のことについて、となった時に。

時間が躊躇いを表すようにレスポンスが遅れ、ぽつりと、
「澤村くんは怪我大丈夫だった?」
と訊かれた。

それを読んで、俺は、ああ、やっぱり本題はその事か、と一人頷く。

文字でのやりとりを続けていたが、多分、このままでは、表面的な言葉しか交わせない気がした。
だから、
「今から電話する」
してもいいか? ではなく、する、と断言して送信し、二分待ってからコールする。

すぐには出なくて、けど、少し待たされた後に耳に届いた声は
『結構強引なんだな。
さすがうちの主将と渡り合えるだけの事はあるよ。』
思ったよりも、しっかりとしていた。

「いやいやいや。
さすがにそちらの主将さんには敗けますよ」
冗談めかして返すが
『貫禄では大敗してると思うけどな』
大真面目な声で結構辛辣な事を言うもんだから、
「……ぶっ」
夜久の尻に敷かれている黒尾の姿が脳裡に浮かんで思わず吹き出してしまった。

『笑うなんてヒドイなー』
「ヒドイって、笑わせたのはそっちなんだが」
『え、感じた事を素直に言っただけなんだけど』
「うん。悪い。そうなると余計腹痛い」

黒尾は俺とは違ったタイプの主将だから夜久のジャッジで貫禄では俺が勝ってるにしても多分他の部分で敗けているだろうし、
夜久も身内の黒尾に厳しい言葉を言いはするがそれは認めあっているが故の軽口だってのもわかる。

言うなれば、スガの旭に対する態度に近い何かを感じた。

『……澤村くんは』
「あー、くん、とか要らないから。
呼び捨てでいいよ。タメなんだし」
学校単位のライバルの選手にくん付けで呼ばれるのはなんだかムズムズした。
スガと夜久はお互いくん付けで呼び合ってるみたいだが。
二人の雰囲気に似合ってるからそれはむしろアリだ。

『そっか? なら俺のことも夜久でいい』
心の中ではとっくに呼び捨てだったのでその赦しは有り難い。
「ああ。そうさせて貰うよ。
それで、怪我のこと、だっけ?」
電話をしようと思ったきっかけになった言葉。
電話の向こうで夜久が深く息を吐く音が聴こえた。

『準々決勝で、チームメイトにぶつかって後半出られなかったってスガくんから聴いたんだけど
……主将、って責任ある立場だったろ?
大事な試合中に抜けるの……キツくなかったか?
次の試合には出られるぐらいだったみたいだから、怪我そのものは大丈夫だったんだろうけど』

その問いに、あの時の気持ちを思い出す。
抜けて、託した時と、戻って、抱いた気持ち。

「キツかったな。いろんな意味で。
アイツらのこと信じてはいたけどな。攻撃の方は全く心配してなかった。
けどほら、知っての通りうち、レシーブ、ダメダメだから」
『あー、確かに、特に一年生のミドルブロッカー二人は穴だな。
でもそっちのリベロ、相当できるじゃん。
って、リベロが不在の時がキツいか』
「そうなんだよ。
西谷がずっと入ってられるんなら守備も心配しなかったんだけどさ。
けど、そのお陰……って言うのも変だけど、その事で他のやつらが成長したみたいだから、まあ結果オーライかな」
『……そっか』

確か夜久はレシーブの着地の時に観客の足を踏んでしまい足首を捻り、コートの脇で直井コーチの治療を受けていたんだっけ。
自分がいないチームを眺めるのは、もどかしかっただろうと、俺にもわかる。

「治療を終えて戻ってからまだ終わってなかった試合を外から観てさ、
縁下……俺の代わりに入った二年生の次期主将候補なんだけど、アイツが試合の中で成長していく姿に
俺はもっと多くあいつに試合経験積ませておけば良かったんじゃないかって思ったよ。」
スターティングメンバーや交代選手を決めるのは烏養コーチだ。
それでも。

「だから、試合に間に合うタイミングだったけど戻るのは止めた。
そもそも俺は、インターハイ予選で敗けた時点で、引退しようかって思ってたしな」
『スガくんと同じ進学クラスなんだっけ。
そっか。そういう選択肢もあったんだな。
黒尾も海も俺も、インハイ予選で敗けても春高こそは、って感じで引退なんて考えてもなかったな。
一年の時掲げた目標が全国制覇だったから』
「それはまた」
『無理だって思うか?』
「いいや。俺達だって県の代表になれたんだ」
その俺達が、実力では及ばない相手。
そんな音駒が苦戦した東京の代表決定戦は、相当な激戦区だったんだろう。
白鳥沢が弱いとかじゃない。
そのレベルのチームがゴロゴロいるんだろうと思う。
木兎率いる梟谷や、
牛島と並んで今年の全国三本の指に入るエースの一人である佐久早を擁する井闥山が同じ地区にいる。
いくら三位までが全国大会に出場出来るとはいえ、そこを勝ち抜いてきたのだから大したものだ。

「それに、優勝なら俺達も狙ってるしな」
敗けるつもりで挑むチームなんていないだろうが、明確に言葉にすることで身が引き締まる気がした。

『ああ。
ゴミ捨て場の決戦が実現しても敗けないからな!』
「こっちの台詞だ」
『……そう言い切るってことは、後進に譲るって気持ちはなくなったのか?』
「完全になくなった訳じゃないさ。
ただ、今の烏野が全国で勝ち進むためには俺が必要だって、
その自負が生まれたからな」

復帰した青葉城西との準決勝と、白鳥沢との決勝戦で。
今更のような気もするけれど、旭のようなパワーも、影山や西谷のような才能も、日向のような身体能力も、月島のような冷静な思考も持ち合わせていない。
それだけが全てではないとスガを観ていてわかっていたつもりだったけど、
身近にスゴい連中がいるからか、どうしても比べて自分を下に置いてしまう。

試合になればそんなことを考えてる暇なんてないし、
自分がそこに届かないことよりもそんな凄いやつらが仲間であることの頼もしさや心強さの方が勝る。

バレーの実力だけじゃなく人間としても、愛すべき馬鹿共だし。

「夜久は、そういうのはとっくに持ってただろうけど」
『…………俺は、逆に、後は芝山に任せるべきなのかなって思っちまったよ』
「え」
夜久がそう言うってことは、それだけ芝山がリベロとしてしっかり役目を果たしてたってことか?
確か一年生だったよな。

『けど、全国大会出場を決めた瞬間、俺はコートの中にいられなかった。
ブロックで指やってた黒尾もだけど』
「そうだったのか」
そこまでは知らなかった。
地域が違う予選の試合中継なんて観られないし、こと細かいレポートも見つけられなくて、
単に三位で全国出場を決めたとしか知らなかった。
夜久のことはスガが教えてくれたが。

『だから、梟谷に敗けた試合が今の俺の中での最後の公式試合だ。
それで終わるなんてイヤだって思った』
「負けず嫌いなんだな」
『じゃなきゃバレーやってないよ』
「違いない」
『芝山本人にも
まだまだ夜久さんには及ばないので試合でその凄さもっと魅せててください、頑張って視て覚えます、
って口説かれちまったし』
「そうだな。確かに音駒の繋ぐバレーは厄介だけど、夜久が抜けたらその怖さが結構薄まる気がするな」
『持ち上げたって何も出ないぞ』
「本気だよ」

実力だけじゃなくて、なんというか、そう、黒尾の主将としてのスタンスもあって、
精神的な支えの役割も夜久が担っているように思えたのだ。
黒尾も黒尾でちゃんと主将なんだが。

「……そういや西谷が日向に夜久のことをなんか言ってたな」
『俺のこと?』
「ああ。確か、
西谷と俺を足して二で割らなかったかんじの人だ、
とかなんとか。
あれはレシーブの能力だけじゃなくてチーム内のポジション的な意味でもあったのかもな。」
『……』
この沈黙は照れによるものだろうな。
本当に、電話にして良かった。

「西谷と俺が同時に抜けていなくなるとか想像するだに恐ろしいよ。
医務室に引っ込まないで、コートの外でだって、
観てくれてるってだけでも相当心強かっただろうな」
『……なるほどなあ』
「なにがなるほどなんだ?」
『スガくんが、大地と話してみたら? って言った意味わかった。
めっちゃ安心する』
言い出したのはスガの方だったのか。
まあ夜久の方から俺と話がしたいなんて言い出さないか。
夜久と俺の間にいるスガだからこその発案だったんだな。

「なんだ。なら、悩んだときとかいつでも連絡してきてくれてかまわないぞ?
無料で相談にのってやる」
わざとおどけたようにそういうと、夜久はくすくす笑いながら
『魅力的な申し出だなー。
いきなり電話して泣きついてもいいのか?』
と返してきた。

「ああ。
それに今回は俺も夜久に話せてすっきりしたよ」
スガが間を取り持ってくれなければ多分この話は誰にも、スガにも旭にもせずに胸の底に沈めておくしか出来なかった。

『なら俺も、澤村の捌け口になるよ』
「それはありがたい」

まあ必要になることなんてお互い滅多にないだろうけど。
そういう場所があるってだけで安心できる、気がする。

それと、話していてわかったことがある。

俺もだけど、夜久も。
自分の負傷退場をマイナスとばかり捉えていない、というか、
来年以降の自分達の学校の為には後輩にああいう場を体験させることができてよかったとすら思ってしまってるということだ。

勝ったからこそ言えるってのもあるだろうが。

こういう、本質的な部分で近いを西谷は嗅ぎ取っていたのかも知れない。
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indecision!【チャリア火】
くっついた後のチャリア火。
三人で付き合ってます。
多分火神くんちでおうちデート中。



+++++++++++++++++++


「オマエらしょっちゅーお互いを褒めてるよな。
仲良いんだな」

火神の何一つ含みのない素直な言葉に、
緑間はむっつりと押し黙って腕を組み、
高尾は「仲が良い、かあー…」と呟いて頭を抱えた。
火神は二人のそんな反応に首を傾げる。
「違うのか?」
「あー……違う、って言うか」
「違うのだよ」
「ちょ、真ちゃん?!」
「取り繕っても仕方がないだろう。
何より、火神に誤解されているようなのが我慢ならん」
「へ?」
緑間が怒りながらつむぐ言葉の意味がわからず混乱する火神に
高尾は助け船を出すようにちょいちょいと手招きして自分に意識を向けさせた。

「あー……あのさあ、オレが真ちゃんのこと褒めるのも真ちゃんがオレのこと褒めるのも、純粋な気持ちからじゃないわけ。
オレら、お互いにもし火神が誰かと付き合うことになるなら
自分じゃなかったらコイツ、って思ってたのな。
緑間が火神に向ける気持ち知ってたし、オレの気持ちも知られてたし
んでもって、二人とも火神が少なからずそういった感情を自分に向けてくれてるって自負もあったからな」
「お、おう……おう?」
自覚のなかった気持ちを知っていたのだと告げられ、火神は頭痛を覚えた。
自分の鈍さにも、二人の鋭さにも。

「で、貴様はどちらかを選べず両方と付き合うと言う道を選んだわけだが」
「選べねーことを選んだとかややこしいな。
……自分のことながら優柔不断で悪ィ」
ばつが悪そうに謝る火神に高尾はいやいやいやと顔の前で高速で手を横に振る。
「悪くはねーよ。
やっぱ自分が選ばれないってなったら選ばれた方とギクシャクしちまっただろうからな」
「そうなのだよ。
それにこうして付き合っていると言うことは、
火神、貴様は高尾のこともオレのことも憎からず想っているのだろう?」
「お、おう? ニクカラズってのはよくわかんねーけど、そういう意味で好きじゃなかったらどっちも断ってる」
火神の応えに緑間は満足そうに頷き、神経質なまでにきちんとテーピングを巻いている左手で眼鏡のブリッジを押し上げた。
「で、だ。
好意を寄せている相手を悪し様に言われたらどう思う?
それが好きな相手からであれ」
「アシザマ?」
今度は文脈からも意味を読み取れなかったらしい火神が首を傾げ頭にハテナマークを浮かべているような表情をしていたため
「あー、悪口を言うってこと」
高尾が助け船を出した。
緑間であれば火神にもわかりやすい日本語を選べるだろうに、わざとやってるんだろうなー、と、内心苦笑しながら。
困惑する火神を愛でるよりも話を滞りなく進める方が重要だろうに、と。

「……ビミョー……だな」
頭の中でシミュレーションでもしていたのか、時間をかけ熟考していた火神はそう結論を出し、
緑間と高尾は深く頷いた。
「だろう。つまりそういうことだ」
「どういうことだよ?」
「保身からなのだよ。
お前に嫌われたくないから相手を褒めているに過ぎん」
「まーあることないことは言わねーけどな。
嘘吐いてまでってのもオカシイし。本当のことだけ。」
別に二人の間で明確にルールを定めた訳ではない。
火神の性格を考えた末行き着いた答が合致しただけである。

だが、だから、互いの思惑にすぐに気づいた。

「やっぱ仲良いじゃねーか。
それに、オマエらの悪口っつーか軽口って、本当にキライだからってわけじゃねーのわかるし。
そーゆーの聴くたび、なんつーか、ソガイカンに襲われるっつーか、」
「火神、それは」
「もういっそオマエらが付き合っちまえよって思うっつーか」
「ないな」
「ないわー」
どうしてそうなった、と緑間と高尾はげんなりとする。

そういう選択肢が視野に入っていたなら火神のようなタイプに本気で入れ込むわけがない。
「高尾となど願い下げなのだよ。
チームメイトとしては悪くはないが」
「そーそー。仲良いったって部活仲間とか友達とかそんな感じで付き合うとかは無理無理。
ぶっちゃけ高尾ちゃんの高尾ちゃんまるっきり反応しねーし」
「高尾」
緑間が名を呼ぶことでたしなめるが
「高尾の高尾?」
火神には意味がわからなかったようだ。
「あ。通じてねーっぽい。
つまり、ちゅーとかそれいじょうとかイチャイチャしてーのは火神だけってこと!
真ちゃんだってそーでしょ?」
「…………そうだが、もう少し包み隠せ。
恥じらいと言うものがないのか貴様は」
「さっきのすぐにわかっちゃった真ちゃんには言われたくないかなー」

「よくわかんねーけど、ヒボーチューショーじゃなくて愚痴とかなら
むしろ溜めねぇ方がいいと思うから、
オマエらのソレを聴いてキライになる、って事はないと思う、ぞ?」
「……いや、だが」
「イイトコだけ見せ合うのってなんか表面だけの付き合いみたいじゃねぇか?
駄目なとこばっかみせてるオレが言うのもなんだけどな」
「そうか?
確かに付き合う前は駄目なところの印象が強かったが、今ではむしろ貴様のことは出来すぎた男だと思っているが」
「駄目なとこも可愛いもんだから問題ない!」

「そういう意味で言ったんじゃなかったんだけどな……
まあ、でもThank You」

「ちなみにオレの未来図的には真ちゃんがなんらかの理由で火神と別れなきゃなんなくなって傷心の火神を慰めて最終的に二人で幸せになる、なんだけどな!」
「高尾……。
そういう風に言われると俄然何が起ころうと乗り越えて火神とは死が二人を別つまで共にいる決意が固まるのだよ」
「それ、結婚式の誓いの言葉みたいだな」
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